インナーブランディングを成功させるワークショップの進め方|事例と失敗を防ぐコツを解説

インナーブランディングを成功に導く鍵は、社員の「自分事化」にあります。その有効な手段であるワークショップですが、準備不足による形骸化の懸念も多いはず。

本記事では、効果を最大化する準備や具体的な実践事例、失敗を防ぐコツを専門家の視点で解説します。なお、本記事は数多くの企業ブランディングを支援する株式会社スカイベイビーズが、培ってきた知見に基づき監修しています。

この記事の監修者
Masato Yasui

株式会社スカイベイビーズ 代表取締役/クリエイティブディレクター
クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。スカイベイビーズでは、コーポレートサイト、採用サイト、オウンドメディアなどジャンルを問わず様々なWebサイトの制作・運用の支援まで幅広く手掛ける。

当社の「インナーブランディングサービス」の特長、料金例、提供サービスなどは下記のサービスページで詳しくご紹介しています。

インナーブランディングにおけるワークショップの有効性

インナーブランディングの成否は、会社が掲げるビジョンと社員個人の価値観をいかに一致させるか、いわゆる「アライメント」にあります。

一方的な情報伝達では、社員は「情報の受け手」に留まってしまいます。対話型のワークショップを導入することで、受け身の姿勢を能動的な参加へと変え、組織全体のブランド浸透を加速させることが可能になります。

従業員の当事者意識を醸成する自分事化の効果

理念は、上から与えられるだけでは「借り物の言葉」に過ぎません。ワークショップを通じて、自分たちの日常業務やこれまでの経験が理念とどう繋がっているかを議論することで、抽象的な概念が手触り感のある「自分事」へと変わります。

このプロセスを経て初めて、社員は自発的にブランドを体現しようという当事者意識を持つようになります。自分たちがブランドを作っているという自負こそが、現場での自律的な行動を促す強力な推進力となるのです。

組織のナラティブ共有と心理的安全性の向上

ブランドが目指す方向に納得感を持たせるためには、「なぜそのビジョンなのか」という背景(ナラティブ)の共有が不可欠です。ワークショップでは、普段言葉にできない想いや現場の違和感をオープンに議論します。

こうした深い対話を通じて相互理解が進むと、組織内に心理的安全性が育まれます。結果として、現場での判断の迷いが減り、ブランドの意志に基づいた迅速かつ一貫性のある意思決定が、組織の隅々まで行き渡るようになります。

部署の垣根を越えた一体感を生む対話の場

多くの組織が抱える「部署間の壁」は、ブランドの一貫性を損なう大きな要因です。ワークショップではあえて異なる職種や年次のメンバーを混ぜ、共通のテーマで議論を行います。

他部署がどのような想いで顧客に向き合っているかを知ることは、相互のリスペクトを生み、組織としての連帯感を高めます。共通のブランド価値を軸に結束することで、セクショナリズムを打破し、全社が一丸となって価値提供を行う「ワンチーム」の体制が整います。

失敗するワークショップと成功するワークショップの決定的な違い

ワークショップの成否は、当日の盛り上がりではなく「実務との接続」があるかどうかで決まります。形だけのイベントは、多忙な現場に「やらされ感」を抱かせ、ブランドへの不信感すら招きかねません。

成功のためには、現場が抱えるリアルな課題に寄り添い、ワークでの気づきを即座に行動へ反映できるような出口戦略までを含めた設計が求められます。

項目失敗するパターン(形だけ)成功するパターン(本質的)
目的綺麗なスローガンを作ること日常業務との「接続」を見つけること
参加者一部の選抜メンバーのみ多様な年次・職種を混ぜた編成
アウトプット壁に貼って終わりのポスター翌日から変えられる具体的な行動指針
フォロー開催して満足して終了称賛文化や評価制度への反映

現場を置き去りにした形骸化のリスクと失敗パターン

よくある失敗は、経営層や外部コンサルタントが用意した「正解」を承認させるだけの会になってしまうことです。現場の実情を無視した綺麗事や、達成不可能な理想論ばかりを語ると、社員は急速に冷めてしまいます。

また、議論の場を設けても、最終的に上層部の意向で結論が覆されるようなことがあれば、社員は思考を停止し、忖度ばかりが横行する形骸化した組織文化が固定化されてしまうリスクがあります。現場の声を「聴く姿勢」の欠如が、失敗の最大の要因です。

実体験を言語化し行動へつなげる成功のポイント

成功するワークショップに共通するのは、個人の実体験やエピソードから価値を抽出している点です。過去の成功例や「自社らしい」と感じた瞬間を自分たちの言葉で再定義することで、理念が血の通ったものとして受け入れられます。

さらに、単なる議論で終わらせず、「明日から具体的に何を変えるか」というアクションプランにまで踏み込むことが重要です。抽象的な議論を具体的な一歩に分解することで、社員一人ひとりが変化を実感できる設計が鍵となります。

ワークショップ後の熱量を冷まさないための仕組み作り

ワークショップ直後の高い熱量は、日常の忙しさに紛れてすぐに失われがちです。その熱を維持するためには、ワークで決めた行動指針を評価制度に組み込んだり、新しい取り組みを称賛したりする仕組み作りが欠かせません。

また、定期的な振り返りの場を設けるなど、会社が本気で変化を求めている姿勢を示し続ける必要があります。「一度やって終わり」のイベントではなく、継続的なフォローアップこそが、ブランドを組織文化として定着させる唯一の道です。

ワークショップを企画するための準備と事前設計

ワークショップの成功は、当日の進行よりも事前の設計(グランドデザイン)が8割を占めると言っても過言ではありません。

「誰が、どのような状態で、何を目指して集まるのか」を緻密に定義し、参加者が日常の業務から離れて、真に創造的な対話に没入できる環境を整えることが重要です。

ここでは、企画段階で押さえておくべき4つの核心的な要素について解説します。

目的の定義と目指すべきゴールの明確化

まずは「何を達成すれば成功か」というゴールを、抽象と具体の両面で定義します。例えば「理念への共感を高める」といった抽象的な目標に加え、「翌日から現場で実践できる行動指針を3つ策定する」といった具体的なアウトプットを設定します。

出口が曖昧な議論は、参加者に「単なるイベントだった」という印象を与え、エネルギーを霧散させてしまいます。企画の初期段階で、このワークショップを通じて組織にどのような変化を起こしたいのか、その一貫した「軸」を定めることが不可欠です。

組織規模や実施期間に応じた最適なプログラムの選び方

組織の規模や、変革にかけられる期間によって、最適なアプローチは劇的に変わります。数名から数十名の組織であれば全員での対話が可能ですが、千名を超える規模では選抜メンバーによる策定と全社への浸透を分ける階層的な設計が必要です。

また、半日の単発イベントでは意識変革のきっかけ作りが限界ですが、数ヶ月にわたる長期プロジェクトであれば、現場での実践と振り返りを繰り返すことで、ブランドをより深く血肉化させることができます。リソースに応じた現実的かつ効果的なプランニングが求められます。

質の高いアウトプットを引き出す問いとアジェンダの設計

参加者の思考を深めるためには、提供する「問い」の質が鍵となります。「過去・現在・未来」の3軸でアジェンダを組み立てるのが効果的です。

例えば、過去の英雄伝を掘り起こす問い、現在のブランドを阻害している壁を特定する問い、そして未来にどのような価値を提供したいかを問う対話です。

ゼロから考えさせると時間が不足するため、事前に「自社の強みだと思う事例」を持ち寄るなどの宿題を課しておくことで、当日の議論の密度を飛躍的に高めることができます。

外部ファシリテーターの活用と非日常を演出する場の作り方

本音の議論を引き出すには、社内の上下関係や既存の力学から解放される「場」の設計が必要です。可能であれば、オフィスを離れたオフサイト(外部会場)での開催を推奨します。

物理的な環境の変化は、心理的な壁を取り払う効果があります。また、社内の人間が進行を務めると、どうしても忖度や結論への誘導が生まれやすくなります。

中立的な立場から問いを投げかけ、議論を整理する外部ファシリテーターを活用することで、潜在的な課題や斬新なアイデアを安全に引き出すことが可能になります。

インナーブランディングを加速させるワークショップの実践事例

実際の現場で大きなうねりを生み出した、性質の異なる3つの成功事例をご紹介します。これらの事例に共通しているのは、抽象的な理念を語るのではなく、社員一人ひとりの「感情」や「実体験」をブランドに接続させている点です。

歴史、痛み、個性といった異なる切り口から、組織がどのように変化したのか、具体的なプロセスを参考にしてください。

創業の精神をリミックスしDNAを継承した老舗製造業

項目内容
対象業種老舗製造業
組織規模約200名
実施期間3ヶ月

背景

創業から50年が経過し、理念が形骸化していました。過去の成功体験を重んじるベテラン層と、現代的な手法を重視する若手層の間で価値観の乖離が進み、社内のコミュニケーションに深い溝ができていることが課題でした。

内容:タイムトラベル・ダイアログ

倉庫に眠る古い製品や当時の写真、顧客からの手紙を「発掘」し、展示する場を設けました。ベテランと若手がペアを組み、当時の苦労や決断の背景をインタビューして「物語」として再構成。そのエピソードに共通する「自社らしい魂」を、現代の言葉で定義し直しました。

効果

若手が会社の歴史を「自分たちのルーツ」としてリスペクトし、ベテランが若手の新しい視点を認める土壌が完成しました。古臭いと思われていた理念が、全員で「守り、進化させるべき誇り」へと昇華され、世代を超えた強い一体感が生まれました。

不都合な真実を直視しサービスの信頼を回復させたIT企業

項目内容
対象業種IT系BtoBサービス
組織規模約100名
実施期間2ヶ月

背景

急成長の裏でサービス品質が低下し、現場の疲弊が限界に達していました。社員は自社ブランドに自信を持てず、会社が掲げる「顧客第一」という理念に対して、「実態と違う」と冷笑的な空気が漂っている状態でした。

内容:葬儀と再生

「今のサービスのここが嫌いだ」「お客様に顔向けできない」という負の側面をすべて吐き出す「葬儀」のワークを実施。不都合な真実を出し切った後、経営陣が課題の解決を約束。その上で、理想のサービスとして「再生」させるための新しい約束を全員で議論しました。

効果

負の感情を隠さず出し切ったことで、社員の心の詰まりが解消されました。経営陣が現場の痛みを直視し、具体的な改善を約束したことで信頼関係が回復。現場から「自分たちの手でサービスを立て直そう」という前向きなエネルギーが再び引き出されました。

個人の価値観とブランド理念を接続させた小売チェーン

項目内容
対象業種接客・小売チェーン
組織規模約1,000名
実施期間半年

背景

多店舗展開により、店舗ごとの接客レベルにバラつきが生じていました。マニュアルの徹底だけでは「やらされている感」が強く、お客様の心に響くような、自発的で血の通ったサービスが提供できていないことが大きな課題でした。

内容:My Brand Identity策定

社員一人ひとりがこれまでの人生で大切にしてきた個人的な価値観を深掘りし、会社のブランド理念と「重なる一点」を探求しました。「自分の個性をどう活かせばブランドに貢献できるか」を言語化し、自分専用の行動宣言(ステートメント)をカードにまとめました。

効果

会社から指示される接客ではなく、自分の個性を発揮するための「やりたい接客」へと意識が劇的に変化しました。各店舗で自律的な工夫が生まれるようになり、結果として顧客満足度が飛躍的に向上。スタッフの定着率向上という副次的効果も得られました。

ワークショップを一時的なイベントで終わらせない2つのコツ

ワークショップで生まれた熱量を一過性のものにしないためには、日常の風景にブランドを溶け込ませる工夫が必要です。当日の盛り上がりを「非日常の思い出」で終わらせず、翌日からの実務を変えるための強力な後押しとなる2つのコツを解説します。

現場の小さな変化を称賛し文化として定着させる

1つ目のコツは、ワークショップ後の新しい挑戦を組織全体で見守り、称賛する文化を作ることです。

直後の熱量は日常の忙しさに紛れて急速に失われがちですが、社内報での事例紹介や表彰制度を通じて「会社が変化を正しく評価している」と示すことで、社員は安心して行動を継続できます。

この小さな成功体験の積み重ねこそが、理念を絵に描いた餅にせず、組織の当たり前へと昇華させる鍵となります。

評価制度や日常業務のルールへ落とし込む

2つ目のコツは、ブランド体現を精神論に留めず、客観的な「制度」や「仕組み」と連動させることです。策定した行動指針を人事評価項目に導入したり、ブランド体現を阻害している古い社内規定を撤廃したりすることで、会社の「本気度」を構造的に示します。

日常の会議体や報告フォーマットにブランドの視点を組み込むなど、意識せずともブランドに触れる環境を設計することで、長期的な定着が確実なものとなります。

インナーブランディングをワークショップで加速させ強い組織へ

インナーブランディングの成功には、ワークショップを通じた「自分事化」が不可欠です。理念を対話で紐解き、現場の行動や制度へ落とし込む設計が変革の鍵となります。

社員の想いをブランドに繋げ、強い組織文化を築く第一歩として、まずは具体的な対話の場を設けることから始めてみてください。

もし、インナーブランディングの推進に難しさを感じたり、組織の在り方に課題を抱えていたりするなら、専門家への相談も一つの手です。

株式会社スカイベイビーズでは、業界や企業規模を問わず数多くのブランディング支援を手掛けています。貴社ならではの価値を共に引き出し、理想の組織作りを伴走支援します。

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