アルムナイ採用を自治体で行うメリットは?公務員の導入事例8選と成功の鍵をプロが解説

人手不足の救世主として自治体で広がるアルムナイ採用のメリットや公務員の最新事例を徹底解説します。本記事は、業界・規模を問わず数多くの採用現場を支援してきた専門コンサルタントの監修を受け、確かな知見と実績に基づいて執筆しました。

この記事の監修者
Masato Yasui

株式会社スカイベイビーズ 代表取締役/クリエイティブディレクター
クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。スカイベイビーズでは、コーポレートサイト、採用サイト、オウンドメディアなどジャンルを問わず様々なWebサイトの制作・運用の支援まで幅広く手掛ける。

【都道府県】公務員のアルムナイ採用事例

まずはじめに、都道府県別のアルムナイ採用事例をご紹介します。

東京都

項目内容
自治体名東京都
参考URLhttps://www.saiyou2.metro.tokyo.lg.jp/pc/selection/rw06/section-alumni.html
https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/03jinji/alumni
内容のまとめ育児・介護やキャリアアップ等で退職した人材を即戦力として厳選採用
主事級から部長級まで、退職後の経験を反映した幅広い職層で募集
随時受付を実施し、民間等で得た知見を都政へ迅速に還元することを重視

東京都は、離職期間中に民間企業等で培った専門知識や多角的な視点を都政に還元することを目的としています。退職時よりも高い職位での採用も可能としており、組織の高度化と柔軟なキャリア形成を支援する戦略的な採用パッケージとなっています。

募集要項

東京都職員として、受験する職種と同一の職種で1年以上の勤務経験があることが必須です。職層に応じて年齢制限(昭和38年4月2日以降生まれ等)があり、インターネットによる随時申し込みが可能です。選考は書類審査と面接で行われます。

効果

外部の最新知見を持つ出戻り職員が加わることで、既存の組織文化に刺激を与え、イノベーションを促進します。また、一からの教育コストをかけずに、行政実務と民間感覚を併せ持つハイブリッドな人材を確保できるメリットがあります。

長野県

項目内容
自治体名長野県
参考URLhttps://www.pref.nagano.lg.jp/jinji/kobo/20260217_almni.html
https://www.pref.nagano.lg.jp/jinji/kensei/soshiki/soshiki/kencho/jinji/r8saisaiyou.html
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC1910S0Z11C23A0000000/
内容のまとめウェルカムバック採用を掲げ、行政・技術職など多彩な職種を募集
採用選考と並行し、退職者との継続的なネットワーク構築を官民連携で推進
実務経験3年以上を要件とし、より円熟したスキルと経験の還元を期待

長野県は、単なる欠員補充ではなく、退職職員を県の資産と捉えたアルムナイネットワークの運用に力を入れています。アプリ等を活用した日常的な接点を維持することで、復職への心理的ハードルを下げ、県政を支える関係人口の拡大を図っています。

募集要項

長野県職員として3年以上の実務経験があり、59歳以下の者が対象です。行政、土木、建築、保健師、薬剤師など広範囲な職種が募集対象となります。

年3回の募集タームが設定されており、ながの電子申請サービスから申し込み可能です。

効果

県外で活躍するアルムナイに再アプローチすることで、Uターン・Iターンを促進し、地方の深刻な専門人材不足を解消します。また、復職に至らなくても、アドバイザーや協力者として県政に関わるパイプが可視化される波及効果があります。

静岡県

項目内容
自治体名静岡県
参考URLhttps://shizuoka.rokin.or.jp/recruit_top/job-return/
https://news.at-s.com/article/1962034
内容のまとめ育児・介護・配偶者の転勤などのライフイベントで離職した層の復職を支援
ジョブリターン制度により、退職前のキャリアを活かした再任用を推進
静岡県労働金庫等の地域インフラとも連携し、多様な働き方を地域でサポート

静岡県は、家庭の事情で離職せざるを得なかった優秀な職員を、再び県政の即戦力として迎える体制を整えています。離職期間をブランクではなく、生活者としての貴重な経験と肯定的に捉え、個人のライフステージに寄り添ったキャリア継続を支援しています。

募集要項

退職理由がライフイベント(結婚、出産、介護等)であり、かつ在職時の勤務成績が良好であった元職員が主な対象です。随時の相談体制を設けており、復職時の本人の希望や状況に合わせて適切な配属先や職位が検討されます。

効果

熟練した知識を持つ職員の復帰により、若手職員の教育負担を軽減し、現場の安定性を維持できます。また、「もしもの時に戻れる場所がある」という安心感が現職職員に広がることで、組織全体の離職防止や定着率向上にも寄与します。

宮城県

項目内容
自治体名宮城県
参考URLhttps://alumnavi.com/miyagi/
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/zinzi/arumunainet.html
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/zinzi/arumunai08.html
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC243TK0U5A920C2000000/
内容のまとめ専用コミュニティ「みやぎアルムナイネットワーク」を構築し、デジタル連携を強化
県外在住の退職者に対しても、最新の県政情報や募集案内を能動的にプッシュ通知
「カムバック採用」を制度化し、多様なキャリアを歩んだ退職者の再雇用を促進

宮城県は、ITツールを駆使した「コミュニティ型アルムナイ」の先駆けです。単に求人情報を出すだけでなく、アプリやSNSを通じて退職者とのエンゲージメントを高め続けることで、採用候補者の母集団を常にアップデートし、必要な時に呼び戻せる仕組みを運用しています。

募集要項

宮城県職員を自己都合で退職した者が主な対象です。ネットワーク登録者を募集の優先ターゲットとしており、専用アプリを通じて募集要項が通知されます。

選考は作文や面接など、現役時代の実績と現在の知見を評価する形式で行われます。

効果

登録者の増加に伴い、採用コストを大幅に抑えつつ、ミスマッチの少ない人材確保が可能となります。また、ネットワークを通じてアルムナイ同士が交流することで、県外企業の成功事例や外部の人的ネットワークが県政に流入する効果も生まれています。

鳥取県

項目内容
自治体名鳥取県
参考URLhttps://www.pref.tottori.lg.jp/320691.htm
https://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?moduleid=60500&pfromid=26
内容のまとめ「鳥取ウェルカムバック職員採用」により、育児・介護やキャリアアップ退職者の復職を促進
専門的な筆記試験を免除し、小論文と面接による「人物・経験重視」の選考を実施
退職後の民間経験を「強み」として評価し、即戦力として県政に還元することを期待

鳥取県は「ウェルカムバック職員採用」を通じ、家庭の事情や挑戦のために一度離職した優秀な人材を呼び戻しています。公務員試験特有の筆記を省き、培った経験や意欲をダイレクトに評価する選考体制を整備。

地方移住(Uターン)の促進と、行政サービスの安定・向上を同時に目指す先進的な取り組みです。

募集要項

鳥取県職員(正規職員)としての職歴がある方が対象です。事務職だけでなく、技術職や専門職でも募集が行われています。

年齢制限は職種によりますが、原則として人物評価を中心とした選考(小論文・面接)が行われ、電子申請での申し込みが可能です。

効果

元職員という信頼感に加え、県外や民間企業で得た新たな知見を導入することで、組織の硬直化を防ぎます。また、UIターン希望者にとって、慣れ親しんだ職場が「再挑戦の場」として開かれていることは、地域への人材回帰における強力な動機付けとなっています。

【市区町村別】公務員のアルムナイ採用事例

次に、市区町村別のアルムナイ採用事例をご紹介します。

立川市

項目内容
自治体名立川市
参考URLhttps://www.city.tachikawa.lg.jp/shisei/saiyo/1006453/1025692.html
https://www.city.tachikawa.lg.jp/_res/projects/default_project/page/001/025/692/annai_alumni.pdf
内容のまとめ事務職だけでなく技術職や専門職(保育士・保健師等)も含めた全方位募集
退職後の他業界での経験を正当に評価し、級号給に反映する給与制度を導入
随時受付とすることで、民間の転職タイミングを逃さない柔軟な体制を構築

立川市は、多様な専門職種の欠員をアルムナイで補完する現実的かつ戦略的な運用を行っています。かつての勤務実績という確かな信頼に、外部で得た新たな視点を上乗せして評価する姿勢を明確にしており、復職者の意欲を高める工夫が随所に見られます。

募集要項

立川市職員として、受験職種と同一の職務に1年以上勤務した経験があることが条件です。採用職層は主事級から部長級まで幅広く、書類選考と2回の個別面接によって決定されます。

履歴書を郵送することでいつでも選考プロセスに乗ることが可能です。

効果

即戦力の獲得により、行政サービスの質を落とさずに専門ポストの維持が可能になります。また、民間企業の処遇に慣れたアルムナイに対しても、適切な級号給設定を行うことで、選ばれる自治体としての採用競争力を維持できていてます。

寝屋川市

項目内容
自治体名寝屋川市
参考URLhttps://www.city.neyagawa.osaka.jp/material/files/group/81/saiyouannai_zenki.pdf
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF303S60Q6A130C2000000/
内容のまとめ再チャレンジ制度を確立し、条件を満たせば原則復職可能な画期的運用
起業や資格取得のための退職を奨励し、職員の「外での成長」を支援する文化
フレックスタイム制や服装自由化など、アルムナイが戻りたくなる職場改革を徹底

寝屋川市は、「公務員は一度辞めたら終わり」という常識を打破し、退職を「武者修行」と定義しています。制度の柔軟性だけでなく、組織内の働き方自体を民間基準にアップデートすることで、一度外の世界を経験した優秀な人材が、自ら戻りたくなるような環境作りを並行して進めています。

募集要項

自己成長やキャリアアップのために退職した元職員が対象。特定の試験よりも、面談を通じた「人間力」や「経営感覚」の評価に主眼を置いています。

復職時の処遇も、外で培ったMBAや起業経験などを最大限に評価する仕組みが整っています。

効果

「いつでも戻れる」という心理的安全性が、現職職員の思い切った挑戦やリスキリングを促し、組織全体の活力を生んでいます。また、先進的な採用施策が全国的に注目されることで、優秀な新卒・中途採用者の応募増という副次的な効果も創出しています。

町田市

項目内容
自治体名町田市
参考URLhttps://www.city.machida.tokyo.jp/shisei/syokuin/bosyu01/2024sikenzixtusizixyoukixyou.files/alumni.pdf
https://www.city.machida.tokyo.jp/shisei/syokuin/bosyu01/index.html
https://x.com/machida_saiyou/status/1990990828777410899
内容のまとめ町田市職員アルムナイ採用を導入し、多様なバックグラウンドを持つ元職員を募集
2年以上の勤務経験を条件とし、基本的な行政スキルを持つ層の即戦力復帰を狙う
公式X(旧Twitter)等のSNSを活用し、ターゲット層へダイレクトに届く広報を展開

町田市は、多様なバックグラウンドを持つ元職員を即戦力として迎えるアルムナイ採用を本格化させています。特設サイトの開設や公式SNSによる発信など、広報戦略にも力を入れているのが特徴。

退職者をかつての仲間として歓迎し、外部で得た知見を積極的に市政へ取り入れる柔軟な姿勢を打ち出しています。

募集要項

町田市職員として、正規職員での実務経験が2年以上あることが条件です。職種は一般事務(行政)や土木・建築などの技術職、保育士、保健師などが対象となります。

選考は書類選考、小論文、面接にて行われ、Webからの申し込みが基本となっています。

効果

SNSを駆使したオープンな募集により、従来の公務員採用ではリーチしにくかった層へのアプローチに成功しています。元職員の「安心感」と外部での「成長」を組み合わせることで、研修コストを抑えつつ、行政課題に多角的に取り組める強い組織作りを実現しています。

アルムナイ採用で成功している自治体に共通するポイント

ここでは、上記でご紹介した自治体に共通する、アルムナイ採用で成功するポイントをまとめました。自治体だけでなく、民間企業が導入する際にも大いに学べるポイントです。

1. 心理的ハードルを下げる「継続的なネットワーク」の構築

単に「再雇用制度を作りました」と掲げるだけでは、退職者はなかなか戻ってきません。長野県や宮城県の事例にあるように、「アルムナイネットワーク」をシステムやアプリを用いて構築・運用している点が非常に重要です。

退職後も定期的に自治体の動向や求人情報を発信し、アルムナイ同士や現役職員との交流の場を設けることで、「いつか戻りたい」「何か貢献したい」というタレントプール(人材の貯金)を形成しています。

2. 「採用」だけでなく「外部パートナーとしての協働」も視野に入れた目的設定

アルムナイの価値は、再び正規職員として戻ってくる「カムバック採用」だけにとどまりません。宮城県の事例にあるように、「アルムナイとの連携による各種県事業の活性化」を目的としている点が秀逸です。

民間企業等で働くアルムナイを外部の有識者やアンバサダーとして位置づけ、副業やプロボノ、あるいは意見交換のパートナーとして行政課題の解決に巻き込む「オープンイノベーション」の基盤として活用しています。

3. 公務員の常識を覆す「柔軟な選考プロセスと適切な処遇」

優秀な人材に戻ってきてもらうためには、受験側の負担を極力減らす必要があります。各自治体とも、以下のような工夫で選考や処遇を最適化しています。

  • 選考の簡略化: 従来の公務員試験(教養試験など)を免除し、書類選考や面接、経験小論文など「人物・経験重視」の選考に切り替えています(東京都、立川市など)。
  • 柔軟な募集時期: 長野県のように年複数回のタームに分けて通年募集に近い形をとったり、立川市のように随時受付としたりすることで、民間企業の転職スケジュールに合わせやすくしています。
  • 納得感のある処遇: 立川市のように、過去の在職期間や職位をベースにしつつ、退職後の民間等での経験を正当に評価して給与や職層(役職)を決定し、キャリアのブランクを感じさせない仕組みを整えています。

4. 「ポジティブな退職」を応援し、受け入れの土壌(働き方)をアップデートしている

最も注目すべきは寝屋川市の事例です。同市は再チャレンジ制度として、資格取得や起業、民間企業への挑戦のための退職をネガティブに捉えず、自己成長のための離職として全力で応援する文化を打ち出しています。

さらに、服装の自由化、フレックスタイム制、テレワーク、ビジネスネームの導入など、「民間企業で働いた後でも、違和感なく働ける(むしろ民間より働きやすい)環境・制度のアップデート」をセットで行っています。

受け皿となる組織風土を変革しなければ、一度外の世界を知った優秀なアルムナイは定着しません。

自治体や公務員におけるアルムナイ採用に関するまとめ

Q:なぜ今、多くの自治体でアルムナイ採用が注目されているのですか?

A:深刻な人材不足への対策に加え、一度外に出た「元職員」が持つ民間知見や客観的な視点を組織に還元し、行政サービスを高度化・変革できるためです。

Q:制度導入を成功させるための重要なポイントは何ですか? 

A:筆記試験の免除といった選考の簡略化に加え、退職後の経験を正当に評価する給与・職位の設定、そして退職後も関係性を維持するネットワークの構築が不可欠です。

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