なぜサードプレイスが必要なのか?社会人が「会社の外に居場所」を持つべき理由

仕事で何かがうまくいかなくなった時、その場所しか持っていないと、急に世界が狭く感じることがあります。

仕事で評価されないと、自分そのものまで否定されたように感じる。職場の人間関係が苦しくなると、逃げ場がない。会社での役割が揺らぐと、「自分は何者なんだろう」とまで思ってしまう。

そんな時に、会社とは別の場所に、自分が関われる場所がある。家族でもいい。友人関係でもいい。地域でも、副業でも、コミュニティでもいい。そこでは、会社とは違う役割で誰かと関わり、別の自分が立ち上がる。

こうした第三の居場所は、「サードプレイス」と呼ばれます。

スカイベイビーズでは、自然体で生きるためには、一つの場所や一つの役割だけに自分を預けすぎないことも大切だと考えています。

会社の外に居場所を持つことには、どんな意味があるのか。ただ参加しているだけのコミュニティと、本当に自分の居場所になっている場所は何が違うのか。そして、組織は社員が外に居場所を持つことをどう捉えればいいのか。

代表・安井の視点からひも解きます。

Masato Yasui

クリエイティブディレクター・代表取締役。クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。2016年より山梨との二拠点生活をスタート。

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居場所は、「いる場所」ではなく「関われる場所」

――そもそも、「居場所」とはどういう場所なのでしょうか?

安井

自分が何かしら関わっていて、そこに自分の価値を出せていると感じられる場所だと思います。

仕事を複数持っている人なら、職場が二つあるということもある。家庭ももちろん居場所ですし、友人関係や地域とのつながりもそうだと思います。ただ、単にそこにいるだけでは、必ずしも居場所にはならない。

たとえば、学びのコミュニティに参加していても、ずっと受け身で話を聞いているだけだと、その場所を「自分の居場所」と感じにくいことがあります。居場所には、自分もその場に何かを返している感覚が必要なんだと思います。

自分が誰かに何かを渡している。誰かの役に立っている。自分の存在が、その場の一部になっている。

そういう感覚があると、場所との関係が変わります。

――主体的に関わることが大事だと。

安井

新しい場所に入って、いきなり何か貢献してくださいと言われても難しいですよね。

だから、最初は受け取るだけでもいいと思います。

まずは話を聞く。誰かとつながる。助けてもらう。それでいい。

ただ、ずっと受け取るだけだと、その場所との関係は深まりにくいと思います。少しずつでいいので、自分も何かを返す側になる。

誰かの話を聞く。自分の経験を共有する。場づくりを少し手伝う。

そうすると、「この場所に参加している」から「この場所の一部である」に変わっていきます。

その感覚が、自分自身のウェルビーイングにもつながるのだと思います。

居場所が増えると、「この場所で全部満たさなくていい」と思える

――会社以外にも貢献できる場所があることは、なぜ大切なのでしょうか?

安井

人は、自分が何かの役に立っていると感じられると、かなり安定すると思います。

会社でうまくいっている時は、そこだけでも十分かもしれません。でも、会社の役割は変わります。

異動もあるし、評価が変わることもある。今まで得意だったことが、組織の変化で求められなくなることもある。その時に、「自分の価値=この会社での評価」だけになっていると苦しくなる。

別の場所では、自分の経験を必要としてくれる人がいるかもしれない。地域では全然違う役割があるかもしれない。

一つの評価軸だけで自分を見なくて済むことは、かなり大きいと思います。

――安井さん自身は、会社の外に居場所を持つ意味を感じた経験はありますか?

安井

30歳を過ぎるくらいまでは、私もかなり少なかったと思います。

仕事が一つあって、あとは家庭というか、当時一人暮らしなら実質ほとんど職場だけですよね。

演劇を観に行くのは好きでしたが、それは自分が関わる場所というより、楽しんだり心を整えたりする場所でした。

その状態だと、仕事で何か嫌なことがあった時に、気分転換はできても、仕事そのものからは逃げ場がない。

その感覚が変わったのは、副業などを始めて、別の仕事や関係ができてからでした。「もしここでうまくいかなくても、自分には別の場所もある」と思える。

別に、今いる会社の重要度が下がったわけではありません。ただ、「ここだけが自分の世界ではない」と思えるようになった。

その心の余裕はかなり大きかったと思います。

――複数の居場所があると、仕事への向き合い方も変わるのでしょうか?

安井

変わると思います。一つの場所しかないと、その場所に多くを求めてしまうんですよね。

ここで評価されたい。ここで認められたい。ここで自分らしくいたい。ここで人間関係もうまくいってほしい。全部を一つの会社で満たそうとすることになる。

でも、別の場所があると、少し分散できます。

この会社では、この役割で価値を出す。別の場所では、もう少し違う自分が出る。友人関係では、仕事とはまったく別の自分でいられる。

そうなると、一つの場所でうまくいかないことがあっても、人生全体まで揺れにくくなる。

居場所を増やすことは、自分を分裂させることではなく、自分の全体性をいろいろな関係の中で生かすことなのだと思います。

役割は違っても、「別人」になる必要はない

――場所ごとに違う顔を持つことは、自然体とは逆にならないのでしょうか?

安井

役割が違えば、出方が変わるのは自然だと思います。

会社では経営者として話す。別の組織では、もう少し違う立場で関わる。家庭ではまた違う自分になる。それ自体は普通です。

ただ、役割ごとに完全に別人になる必要はないと思っています。

「ここではこのキャラクター」「ここでは別のキャラクター」と切り分けすぎると、今度はそれが苦しくなる。役割は違っても、自分の全体を持って関わる。

自分が考えていることや、大切にしていること、弱さも含めて、場所によって出方を変えながら関わっていく。そのほうが自然だと思います。

――価値を発揮する場所だけではなく、安心できる場所も居場所になりますか?

安井

それもすごく大事だと思います。

何かを頑張って提供しなければ居場所にならない、ということではありません。

今の職場や生活に少ししんどさがある時に、そこへ行くと少し呼吸ができる。話せる人がいる。自分を整えられる。

そういう場所にも意味があります。

スカイベイビーズでも、ソラミドpeopleというコミュニティをやっていますが、そこが一つの寄り所になればいいと思っています。

今の人生で少し生きにくさを感じている時に、別の関係の中でいい時間を過ごす。その中で、少し前向きになれたり、自分の働き方や生き方を見直せたりする。

そういう役割を持つ居場所もあると思います。

居場所の「数」より、自分にとっての意味を見る

――居場所は、多ければ多いほどいいのでしょうか?

安井

数を増やせばいいという話ではないと思います。

当然、時間は有限です。一日24時間しかないので、どこにどれくらい時間を使うかは考える必要があります。

たとえば、今の仕事に8時間使っていて、別の活動に1時間使っている。その1時間がすごく面白いとか、自分の未来にとって大事だと感じるなら、少しずつ2時間にしてみる。

その分、別のところを調整する。そうやって、自分に合うバランスを探せばいいと思います。

ただ、時間の長さだけでもありません。週に1時間しか関わっていなくても、その場所がなくなるとかなりしんどいということもある。

自分の中で、その場所がどんな意味を持っているのか。そこも見たほうがいいと思います。

――居場所を見つけることはハードルが高いと感じる人もいると思います。

安井

会社の外に居場所をつくろう、と言われても、「そんな場所はない」と感じる人もいるかもしれません。

まずは新しい場所を探す前に、今の自分がどんな関係の中にいるかを見てみてもいいと思います。

大切なのは、自分の人生が一つの場所だけでできていないかを見てみることです。

たとえ小さくても、「ここでは会社とは違う関わり方ができている」と思える場所があれば、それはすでに一つの居場所かもしれません。

外で得たものを、会社に持ち帰ることもできる

――組織側は、社員が会社の外に居場所を持つことをどう捉えればいいのでしょうか?

安井

会社が、人を自社の役割一つに縛りつける時代ではないと思っています。

他の場所で学ぶこともある。違う人間関係の中で考え方が広がることもある。別の仕事で新しいスキルを身につけることもある。そこで心を整えて戻ってくることもある。

そういうものも全部、その人自身です。

会社として大事なのは、「外に行かないでください」と囲うことではなく、この会社にも関わり続けたいと思ってもらえる関係をつくることだと思います。

会社には会社の理念や個性があります。その個性と、その人の人生がどこかで重なって、お互いに関わる意味がある。

そういう関係であれば、縛りつけなくても人は関わってくれると思います。

――会社の外に居場所があることは、組織にとってもプラスになるのでしょうか?

安井

普通にあると思います。

違うコミュニティに関われば、会社の中だけでは出会えなかった考え方に触れます。

副業をすれば、別の仕事の進め方を経験することもある。地域活動をすれば、普段とは違う世代や立場の人と関わる。

そういう経験を持った人が会社に戻ってくると、会社の中での発想や関わり方も変わります。

一つの組織の文化だけでずっと生きるより、外にいろいろな関係を持っている人がいるほうが、組織としても豊かになると思います。

サードプレイスは、「自分らしさ」を増やす場所でもある

――スカイベイビーズが考える自然体と、サードプレイスはどうつながりますか?

安井

自分らしさは、一つの場所だけで見つかるものではないと思っています。

会社では出てこない自分が、友人の前では出ることがある。地域に行くと、また違う自分になる。副業では、会社とは違う力が出るかもしれない。

その中で、「こういう関係だと自分は自然なんだ」とわかってくる。だから、居場所が増えるということは、自分の出方を知る場所が増えることでもあると思います。

ただし、場所ごとに完全に別人になる必要はありません。

役割は違っても、自分の全体を持って関わる。その場所ごとに少し違う自分が立ち上がっても、全部つながっている。

そういう感覚で複数の場所と付き合えると、かなり生きやすくなると思います。

――これから会社の外に居場所をつくりたい人は、何から始めればいいでしょうか?

安井

急いで大きなコミュニティに入らなくてもいいと思います。

今まで会社と家庭だけだった人が、急に週末を全部別の活動に使うようになると、それはそれで生活が大きく揺れます。

だから、小さくはみ出してみるくらいでいい。

気になるイベントに一度行ってみる。友人の活動を手伝ってみる。興味のあるコミュニティを少し覗いてみる。副業を小さく始めてみる。

合わなければやめればいい。

大事なのは、「新しい居場所をつくらなければ」と義務にしないことです。少し違う関係の中に自分を置いてみる。

その中で、「ここにはもう少し関わってみたい」と感じる場所があれば、少しずつ関係を深めていけばいいと思います。

一つの場所に、自分の人生を預けすぎない

会社の外に居場所を持つ意味は、単に逃げ場を増やすことではありません。

自分の価値を一つの場所だけで測らなくて済むこと。会社とは違う関係の中で、自分の別の面に気づけること。誰かから受け取るだけでなく、自分も何かを返せる場所を持つこと。それによって、一つの場所との関係も少し楽になります。

会社ですべてを満たさなくていい。家庭ですべてを満たさなくてもいい。いくつかの関係の中で、それぞれ違う役割を持ちながら、自分の全体を生きていく。

スカイベイビーズでは、そうした生き方も自然体の一つだと考えています。

あなたの人生には今、「ここがなくなったら、自分の世界が少し狭くなる」と思える場所が、会社以外にあるでしょうか。

もしまだなかったとしても、急いで探す必要はありません。いつもの場所から、ほんの少しだけはみ出してみる。そこから、新しい居場所は始まるのかもしれません。

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※なお、スカイベイビーズのウェルビーイング力向上支援サービスページはこちらです。より詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

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