「幸福学」研究の第一人者、前野隆司氏と共同研究したサーベイ『ソラミドWell-being』を通して、次世代の自由でフラットな組織を模索する


働きがいを高める具体例として成果が確認されているのは、社員の声を測って応える仕組みづくり、評価や働き方の見直し、施策の小さな試行の3つです。
本記事では、ウェルビーイング経営を支援する株式会社スカイベイビーズの監修のもと、取り組みと結果を公開している国内外11社の具体例を紹介します。あわせて、国内と海外の違いや、具体例に共通するポイントも整理しました。
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株式会社スカイベイビーズ 代表取締役/クリエイティブディレクター
クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。スカイベイビーズでは、コーポレートサイト、採用サイト、オウンドメディアなどジャンルを問わず様々なWebサイトの制作・運用の支援まで幅広く手掛ける。
働きがいとは、社員が仕事に意味や手応えを感じ、前向きに取り組めている状態のことです。働きがいのある会社を調査するGreat Place to Work Institute Japanも、働きがいを「働きやすさ」と「やりがい」の両輪からなるものと捉え、その双方の観点から評価しています。
本記事で紹介する具体例も、この2つの観点から読むと、各社の施策の狙いがわかりやすくなります。
| 観点 | 働きやすさ | やりがい |
| 主な要素 | 労働時間 | 仕事の意味 |
| 休暇 | 成長実感 | |
| 柔軟な働き方 | 貢献の手応え | |
| 処遇 | ||
| 施策の例 | テレワーク | 戦略の浸透 |
| フレックスタイム | 評価への納得感 | |
| ベースアップ | キャリア支援 |
自社のnoteやコーポレートサイトなどで、働きがい向上の取り組みと結果を数値つきで公開している国内企業6社の事例を紹介します。
| 項目 | 内容 |
| 社名 | サイボウズ株式会社 |
| 参考URL | サイボウズ プレスリリース(2010年8月2日) |
| サイボウズ 企業概要(PDF) | |
| サイボウズ チームワーク総研ブログ | |
| 業種 | ソフトウェア(グループウェア開発) |
| 社員数 | 1,356名(連結、役員を除く、2025年12月末時点) |
| 概要 | 最長6年の育児休業制度 |
| 在宅勤務の試験導入 | |
| 働き方を話し合って決定 |
サイボウズはグループウェアを開発する会社です。離職率が高かった時期から、人事制度と働き方の改革を長年続けてきました。
2000年代半ばのサイボウズでは、朝9時の出社が絶対で、少しでも遅れると反省文を書くような厳しいルールがありました。その後、2006年に最長6年の育児休業制度を導入し、働き方に応じて人事報酬制度を選べる選択型の制度も整えました。
2010年には全社員を対象に在宅勤務を試験導入し、現在は勤務時間や場所を社員と会社が話し合って決める働き方マッチングという仕組みになっています。
2005年頃に組織変革を始めた当時、離職率は28%に達していました。制度の見直しを重ねた結果、2025年12月期の離職率は4.36%まで下がっています。
同社の人事担当者は、制度が変わっても風土はすぐには変わらず、土台ができるまでに4〜5年かかったと振り返っています。
制度そのものより、試しながら少しずつ広げてきた進め方に学ぶ点があります。在宅勤務も、まずは期間と回数を区切って試験導入し、状況を見ながら対象や条件を広げてきました。
「小さく試し、ルールを直し続ける」という型は、規模を問わず応用できます。制度が根づくまでに数年かかる前提で、腰を据えて取り組むことが大切です。
| 項目 | 内容 |
| 社名 | 株式会社ブレイン・ラボ |
| 参考URL | エンゲージメントへの取り組み~4年間の挑戦と成果を大公開~(公式note) |
| 株式会社ブレイン・ラボの会社情報(Wantedly) | |
| 業種 | ソフトウェア(人材業界向け業務システム開発) |
| 社員数 | 約60名(Wantedly掲載時点) |
| 概要 | 部署横断の改善チーム結成 |
| 評価基準を等級別に明確化 | |
| 評価期間中のサポート面談 |
ブレイン・ラボは、人材紹介・派遣会社向けの業務システムを開発する、社員約60名の会社です。公式noteで、約4年間にわたる組織改善の取り組みと結果を公開しています。
コロナ禍で在宅勤務制度を立ち上げ、社員同士が顔を合わせる機会が減ったことで、一人ひとりのモチベーションや状態を把握しにくくなったことが出発点です。そこで同社は、社員の働きがいを数値で測るアンケート(エンゲージメントサーベイ)に本格的に取り組み始めました。
人事3名に開発部・営業部から1名ずつを加えた計5名の「組織改善チーム」をつくり、調査結果の振り返りと施策づくりを進めています。各部署のマネージャーにも、自部署の強み・弱みやスコアが変わった理由を分析し、次の行動を決めて実行するよう依頼しました。
あわせて人事制度を改定し、年齢や在籍年数に関係なく、等級ごとに明確にした基準で実力や成果を評価する仕組みに変えています。評価期間の途中には、上司が部下の目標達成を支える「サポート面談」も設けました。
同社は約4年前、あるエンゲージメントサーベイのツールを使って、社員の働きがいを数値化していました。その後、一時的に別のツールに切り替えていましたが、約4年ぶりに最初と同じツールで測り直したところ、全体のスコアが11.5ポイント改善していました。
すべての項目でスコアが上がり、特に「施設環境」「制度・待遇」「内部統合(目標の共有や職場の一体感など)」の伸びが大きかったとしています。
この間、在宅勤務手当やフレックスタイム制度、ワーケーション制度の導入、有給休暇の付与を入社半年後から入社初日に早めるといった、働きやすさの改善もあわせて進めました。
人事だけで抱え込まず、現場の管理職を改善の当事者にした点が最大の特徴です。また、働きやすさの施策に加えて、評価への納得感という「やりがい」の側面にも手を打っています。
ただし、4年の間には別のツールを使っていた期間があり、毎年同じ物差しで変化を追えていたわけではありません。施策の効果を確かめるには、同じ指標で継続して測ることが重要です。
| 項目 | 内容 |
| 社名 | 大成設備株式会社 |
| 参考URL | エンゲージメントスコアの推移|大成設備株式会社 |
| 業種 | 建設業(空調・給排水・電気などの設備工事) |
| 社員数 | 540人(2024年4月1日時点) |
| 概要 | 役員と全社員の対面対話 |
| テレワーク・定年延長 | |
| ジョブ型人事制度の導入 |
大成設備は、大成建設グループで空調・給排水・電気などの設備工事を手がける建設会社です。コーポレートサイトで、エンゲージメントスコアの推移と、スコアを高めるための施策を公開しています。
同社は2023年から、リンクアンドモチベーション社が提供する「モチベーションクラウド」という調査ツールを導入しています。これは、社員と会社がどれだけ良い関係を築けているか(エンゲージメント)を測るための社員アンケートです。
社員はさまざまな項目について、会社に「どれだけ期待しているか」と「実際にどれだけ満足しているか」を、それぞれ5段階で答えます。
期待していることが満たされているほど、会社と社員の相互理解が進んでいると判断できるため、同社はこの結果を、組織の課題に優先順位をつけて改善を進めるために使っています。
2023年3月の第1回の結果を受けて、同社は次のような施策を順に実施しました。
この調査の結果は、期待度と満足度の回答から算出された「エンゲージメントスコア」という1つの数値にまとめられます。スコアは、最も高いAAAから最も低いDDまでの11段階で評価されます。
同社のスコアは、第1回(2023年3月)が49.6でB評価と、平均的な水準でした。その後、2024年6月には58でA評価、2025年6月には61.9でAA評価と上がり、11段階のうち上から2番目の評価になりました。
建設業の平均スコアは47でB評価とされており、同社は平均を大きく上回っています。
長時間労働や人手不足のイメージが強い建設業で、スコアの推移と施策を時系列で開示している点が珍しい事例です。コミュニケーション、働きやすさ、処遇・評価の3方向から同時に手を打っており、一つの施策に頼らない構成になっています。
現場系の業種でも働きがいは改善できることを示す好例です。
| 項目 | 内容 |
| 社名 | 株式会社プロジェクトホールディングス |
| 参考URL | エンゲージメントスコア「S評価」達成!組織改善の成果を公開(公式note) |
| ベンチャーならではのスピード感をもって打ち手を進め、スコア改善効果が出ている事例(Geppo導入事例) | |
| 人事課題可視化ツール「Geppo」の導入事例として紹介されました(同社公式サイト) | |
| 業種 | コンサルティング(DX支援など) |
| 社員数 | 350名(連結、2025年12月期) |
| 概要 | 年2回の社員アンケート |
| 戦略を階層ごとに説明 | |
| 社内報で好事例を紹介 |
プロジェクトホールディングスは、企業のDX支援などを手がけるコンサルティング会社です。公式noteで社員のエンゲージメント調査の結果を公開しているほか、調査ツールの提供元の導入事例でも、具体的な施策を紹介しています。
社員数が増える中で、一人ひとりが何を考えているのかを把握しにくくなり、退職者が出てもその理由がわからないことが課題でした。そこで2024年2月から、リクルートの調査ツール「Geppo」を導入し、年2回、社員の働きがいを測るアンケートを実施しています。
初回の調査で、「事業戦略の浸透」と「同僚からの称賛」の項目が同業他社より低いとわかったため、次の打ち手を実施しました。
1つ目は、戦略の伝え方の見直しです。それまでは社長が全社員に話して終わりでしたが、組織の階層ごとに順番に噛み砕き、各組織の戦略と結びつけて説明するようにしました。2つ目は、月1回の社内報で、各組織の良い取り組みを紹介するコンテンツの追加です。
このほか、若手の育成を重視した組織体制への変更や、人事評価制度の見直しも行っています。
Geppoのエンゲージメントスコアは、「経営」「事業戦略」「働き方」「上司」「同僚」「仕事」「成長機会」「評価」の8つの項目の点数を100点満点に換算し、平均したものです。
2025年2月の調査ではスコアが79.4点となり、Geppoの評価基準でS評価を獲得しました。Geppoを利用する企業全体の平均や、同業界の平均も大きく上回っています。2024年2月、2024年8月、2025年2月と、調査のたびにスコアが上がっており、特に「事業戦略」と「仕事」の項目が伸びました。
会社自身は、戦略への理解と共感が深まり、自分の業務とのつながりが見えたことで、仕事のやりがいが上がったと分析しています。働きがいは制度や福利厚生だけでなく、「会社の戦略と自分の仕事のつながり」を理解することでも生まれます。
予算をかけずに始められ、中堅・中小企業にも応用しやすい打ち手です。
| 項目 | 内容 |
| 社名 | Recovery International株式会社 |
| 参考URL | 従業員エンゲージメントスコア 世界優良基準を大幅達成!管理職研修が効果を発揮(公式サイト) |
| 従業員エンゲージメントスコア、世界優良基準を継続達成!MVV浸透が強固な基盤を確立(プレスリリース) | |
| 業種 | 医療(訪問看護・リハビリ) |
| 社員数 | 320名(2025年の調査対象従業員数) |
| 概要 | 管理職研修を毎週開催 |
| オンライン目安箱の設置 | |
| 毎月のMVV研修 |
Recovery Internationalは、東京都新宿区に本社を置き、訪問看護ステーションを運営する上場企業です。コーポレートサイトやプレスリリースで、社員のエンゲージメント調査の推移と施策を公開しています。
同社は2022年から、米国Gallup社が開発した「Q12」という調査を使い、全社員の働きがいを毎年測っています。Q12は、働きがいに関する12の質問に答えてもらい、その平均点でエンゲージメントの高さを表す調査です。
調査結果をもとに、次の3つの施策を進めてきました。
全社の平均点は、2022年の3.71から、2023年は3.76、2024年は3.85と上がりました。2025年は3.83とほぼ同じ水準を保っており、調査対象の社員320名のうち95.0%が回答しています。
スタッフが一人で利用者の自宅を訪問する訪問看護は、仲間と顔を合わせる機会が少なく、職場の一体感を持ちにくい業態です。その中で、管理職の支える力を毎週の研修で磨き、社員の声を目安箱で拾い、理念を新入社員に経営陣が直接伝えるという3つの施策を地道に続けている点が特徴です。
スコアが3年続けて上がり、その後も高い水準を保っていることに加え、調査の回答率が95%前後と非常に高いことも注目すべき点です。社員が調査を信頼して答えていることの表れと考えられ、チームで働く実感をどう育てるかに悩む企業にとって参考になる事例です。
| 項目 | 内容 |
| 社名 | 日本ペイントホールディングス株式会社 |
| 参考URL | 日本グループの従業員エンゲージメント向上に向けた取り組み |
| 業種 | 化学(塗料メーカー) |
| 社員数 | 3,343人(日本セグメント、2025年12月31日時点) |
| 概要 | 役員向けEQプログラム |
| 生成AI導入と業務改革 | |
| ジョブクラフティング浸透 |
日本ペイントホールディングスは、塗料の大手メーカーです。2024年から日本国内のグループ会社(日本グループ)で社員のエンゲージメント調査を始め、統合報告書2026で、その結果と施策を課題も含めて開示しています。
2024年の調査で、「会社の将来に高揚感を持てていない」「業務環境の整備が不十分」「能力やキャリアを伸ばす機会が少ない」という3つの課題が見えました。同社は、それぞれの課題に次のような施策を対応させています。
さらに2025年は、調査結果を役員だけでなく部門長にも職場ごとに開示し、職場単位での対話と改善につなげる土台をつくりました。
2025年の調査では、全体のスコアは前年とほぼ同じ水準でした。一方で、エンゲージメントを構成する3つの要素は、いずれも改善しています。
同社はこの結果を、変革はまだ途上だが、現場の意識や行動に変化が生まれ始めているサインだと受け止めています。
全体スコアが横ばいだったことを率直に開示している点に価値があります。大企業の改革は、1〜2年で総合点が動くものではなく、どの指標に兆しが出ているかを見極めることが重要です。
「課題→施策」を3つずつ対応させた構造は、自社の施策設計の型として使えます。なお2025年は、調査システムを変更しており、スコアは自社換算による値です。
自社ブログや公開ハンドブック、人事データ集などで、働きがい向上の取り組みと結果を数値つきで公開している海外企業5社の事例を紹介します。
| 項目 | 内容 |
| 社名 | GitLab Inc. |
| 参考URL | Engagement Surveys and Employer Awards|The GitLab Handbook |
| 業種 | ソフトウェア(開発プラットフォーム) |
| 社員数 | 約2,580名(60か国、2026年1月31日時点) |
| 概要 | 調査結果を毎年公開 |
| 部門ごとの改善計画 | |
| 短い定点調査を新設 |
GitLabは、ソフトウェア開発のためのプラットフォームを提供する米国の会社で、社員全員がリモートで働いています。社内規程やマニュアルを「ハンドブック」として社外にも全面公開しており、エンゲージメント調査の結果も毎年このハンドブックに載せています。
同社は年1回、外部の調査会社(Culture Amp)を通じて、全社員を対象にしたエンゲージメント調査を行っています。調査後は全部門に、結果の良い点と悪い点、推奨する行動をまとめた改善計画のページを作るよう推奨しています。
さらに2025年11月には、年1回の調査を補う短いアンケート(パルスサーベイ)を初めて実施しました。年次調査で課題が見えた項目の進み具合と、改善計画が効いているかを、次の年次調査を待たずに確かめることが目的です。
同社のエンゲージメントスコアは、エンゲージメントに関する5つの質問に、肯定的に答えた社員の割合で表されます。2025年6月の年次調査では、このスコアが75%となり、前年の78%から3ポイント下がりました。回答率は86%で、前年より3ポイント上がっています。
項目別に見ると、「心理的安全性」88%、「直属の上司」85%が高い一方で、「この調査を受けて会社が行動すると思う」は58%、「今年度の変化は企業文化を良くした」は36%にとどまりました。
成功例ではなく、スコアが下がったときの向き合い方の好例です。「この調査を受けて会社が行動すると思う」が58%という結果は、社員が答えても何も変わらないと感じ始めているサインです。
改善計画を部門ごとに見える形にし、次の年次調査を待たずに短いアンケートで進み具合を確かめる仕組みは、調査を形だけにしない工夫として参考になります。
| 項目 | 内容 |
| 社名 | Buffer Inc. |
| 参考URL | Four-Day Workweek Update: Here’s How The Buffer Team is Feeling About It, Three Years In |
| Buffer Is Moving to a 4-Day Workweek for the Rest of 2020 | |
| 業種 | ソフトウェア(SNS運用ツール) |
| 社員数 | 78名(2023年の調査時点) |
| 概要 | 週4日勤務の試験導入 |
| 5日目を予備日に再定義 | |
| 導入後も定期的に社内調査 |
Bufferは、企業や個人のSNS投稿を管理するツールを提供する米国の会社で、社員全員がリモートで働いています。給与や業績まで公開する透明性の高さで知られ、週4日勤務の導入とその結果も自社ブログで報告しています。
コロナ禍の2020年5月、社員のストレスを減らすことを目的に、1か月限定で週4日勤務を試しました。社員アンケートで良い結果が出たため2020年末まで延長し、その後も制度として続けています。
週の労働時間は32時間で、金曜日を休みにしています。ただし、顧客対応を担うカスタマーサービス部門だけは別の運用にしています。運用面の工夫として、休みの金曜日を「必要なときだけ使う予備日」と位置づけました。
仕事が終わらない週は金曜日に働いてもよい一方で、それを前提にはせず、必要がなければ完全に休むよう勧めています。
導入から約3年後の2023年、社員78名のうち53名が回答した社内アンケートでは、回答者全員が週4日勤務を続けたいと答えました。実際に週4日(または1日の時間を短くした週5日)で働けている人は78.8%で、前回の調査の73%から増えています。
一方で、リモートワークと週4日勤務の組み合わせによって、同僚とのつながりを作りにくいという課題も挙がりました。
うまくいかない週があることを前提に、制度を設計している点に学ぶところがあります。金曜日を予備日としたことで、忙しくて休めない週があっても、それを制度の失敗とせずに続けられます。
また、1か月の試行から始め、社員アンケートで効果を確かめながら制度を広げてきた進め方も参考になります。同僚とのつながりの作りにくさという課題も公開しており、新しい制度を入れるときに何に気をつけるべきかも学べる事例です。
| 項目 | 内容 |
| 社名 | Atlassian Corporation |
| 参考URL | Lessons learned: 1,000 days of distributed at Atlassian |
| Office attendance doesn’t drive team connection. So what does? | |
| 業種 | ソフトウェア(チーム協働ツール) |
| 社員数 | 約12,000名(2025年4月の報道時点) |
| 概要 | 働く場所を毎日選べる |
| 行動科学チームの社内実験 | |
| 年3回のチーム集合 |
Atlassianは、オーストラリア発で、JiraやConfluenceなどのチーム向けソフトウェアを提供する会社です。2020年から続ける「Team Anywhere」という働き方の成果と学びを、自社ブログで公開しています。
同社は2020年から、社員が働く場所を毎日自由に選べる「Team Anywhere」という制度を続けています。その結果、社員は世界12か所のオフィスに限らず、1万か所以上の場所から働くようになりました。
一方で、離れて働くと社員同士のつながりは薄れやすくなります。そこで、社内の行動科学の専門家チーム「Team Anywhere Lab」が四半期ごとに社内実験を行い、効果的な働き方を検証しています。
その一つが、チームで意図的に集まる機会の効果測定です。集まる前と後の月に社員アンケートを取り、つながりの実感がどれだけ変わるかを調べました。あわせて、オフィスの利用状況をもとに一部のオフィスを閉じ、チームで集まることに特化したオフィスへ費用を振り向けています。
社員の92%が「この働き方で最高の仕事ができる」と答え、91%が「会社に残る重要な理由になっている」と答えています。チームで集まった後は、つながりの実感が平均27%高まりました。
ただし、その効果は4か月ほどで元の水準に戻ることもわかり、同社はこの結果から、4か月に1回、つまり年3回程度集まるのが最適だとしています。
働きがい施策を感覚ではなく、小さな社内実験で検証してから広げる点が最大の学びです。「チームで集まった効果は4か月ほどで薄れる」というデータは、全社行事や合宿をどのくらいの頻度で開くべきかを決める根拠として使えます。
リモートワークを取り入れながら、社員同士のつながりをどう保つかに悩む企業にとって、具体的な目安を示してくれる事例です。
| 項目 | 内容 |
| 社名 | Deutsche Telekom AG |
| 参考URL | Results from Pulse Survey 2025|Deutsche Telekom HR Factbook 2025 |
| 業種 | 通信 |
| 社員数 | 198,079名(グループ、2025年12月31日時点) |
| 概要 | 10万人規模の定点調査 |
| 否定回答者へ追加質問 | |
| 属性別に結果を開示 |
Deutsche Telekomは、ドイツを本拠とし、世界で約20万人が働く大手通信会社です。人事データ集「HR Factbook」で、社員のエンゲージメント調査の結果を、年齢や性別などの属性別まで毎年公開しています。
同社は毎年11月、グループ全体の社員を対象に、パルスサーベイと呼ぶアンケートを実施しています。2025年11月の調査では、「協働」「信頼の文化」「業務とプロセス」の質問に否定的に答えた人にだけ、追加の質問を出す設計にしました。
全員に長い調査を課すことなく、不満を持つ人の理由を深く聞き出すための工夫です。自由記述の質問には、「仕事への意欲をさらに高めるには何が必要か」に3万6,295件、「キャリア開発について伝えたいこと」に1万7,843件のコメントが集まりました。
前者では給与・福利厚生・リーダーシップ、後者では成果・成長・リーダーシップに関する声が多く寄せられています。
同社のエンゲージメントスコアは、「職場の雰囲気」「雇用主としての魅力」「ブランドへの共感」「仕事への意欲」の4つの質問への回答を、100点満点で平均したものです。2025年11月の調査には10万4,000人以上が参加し、回答率は81%でした。
スコアは前年と同じ77点で、2021年以降は76〜78点の間で推移しています。4つの質問のうち3つは前年より上がりました。一方、項目別で肯定的な回答が最も少なかったのは、「キャリア開発」の58%と、「調査後のフォローが効果的か」の65%でした。
スコアが上がった事例ではありませんが、10万人規模で5年間ほぼ横ばいという現実を毎年開示し続けている点に価値があります。否定的に答えた人にだけ理由を聞く設計は、すぐに真似できる工夫です。
「調査後のフォロー」が低い点はGitLabと同じ構造の課題で、国や規模を問わない弱点だとわかります。
| 項目 | 内容 |
| 社名 | United Utilities Group PLC |
| 参考URL | Engagement|United Utilities |
| 2025/26 Preliminary full year results(PDF) | |
| 業種 | 上下水道 |
| 社員数 | 約6,793名(フルタイム、2025年度) |
| 概要 | 年1回の全社意見調査 |
| 外部機関で他社と比較 | |
| 多様な発言機会を用意 |
United Utilitiesは、イングランド北西部で上下水道事業を担う英国の会社です。コーポレートサイトや決算資料で、毎年の社員意識調査の結果を公開しています。
同社は毎年、全社員を対象とした意見調査「Your Opinion Survey」を実施しています。調査は英国の大手調査会社Willis Towers Watsonが担当しており、英国企業の平均や、業績の高い企業の平均、同業他社の平均と比べることができます。
また、調査以外にも、社員が意見を伝える機会をさまざまな形で設けています。
2025年の調査では、エンゲージメントのスコアが87%となり、前年より6ポイント上がりました。2026年の調査では、社員の86%が回答し、スコアは90%まで上がっています。
2025/26年度の離職率は4%と低く、項目別では「ウェルビーイング」「健康・安全」が96%、「自分の声が届いている」が90%でした。
現場作業の多いインフラ企業でありながら、「自分の声が届いている」と答えた社員が90%と高く、離職率の低さにもつながっている点が参考になります。柔軟な働き方を広げにくい業種では、安全・健康への配慮と、声を聞いてもらえる実感が働きがいの土台になると考えられます。
業種の特性上、テレワークなどの施策を取り入れにくい企業にとって、何を重視すべきかのヒントになる事例です。
国内と海外の具体例を比べると、施策の中身以上に、発信の目的や測り方といった取り組みの姿勢に違いが見られます。なお、紹介した11社は自社サイトで情報を公開している企業から選んでおり、国全体の傾向を示すものではない点にご注意ください。
| 観点 | 国内(6社) | 海外(5社) |
| 発信の目的と場所 | 採用広報(note、自社ブログ)が中心。統合報告書は一部 | 情報開示(公開ハンドブック、人事データ集、IR)が中心 |
| 結果の見せ方 | 「S評価達成」「AA」など達成を強調する傾向 | 横ばいや低下もそのまま開示する例が多い |
| 施策の重心 | 制度・処遇・理念浸透・管理職育成 | 働く場所や時間の自由度、測定と実験の仕組み |
| 測り方 | 外部ツールの格付けや業界平均との比較 | 肯定回答率の推移、設問別・属性別の分解、社内実験 |
| 取り組みのきっかけ | 離職の多さや社員の状態が見えないといった危機感 | コロナ後の働き方を戦略として選んだこと |
| 管理職の位置づけ | 管理職を「育てる・巻き込む」対象 | 上司の評価は高く、課題は経営層への信頼や変化の進め方 |
国内企業は採用広報、海外企業は情報開示を目的に発信する傾向があります。国内の具体例は、noteや自社ブログなど、主に求職者に向けた媒体での発信が中心でした。
一方で海外の具体例は、GitLabの公開ハンドブックやDeutsche Telekomの人事データ集のように、社内外への説明責任を果たす場での発信が目立ちます。国内でも日本ペイントは統合報告書で開示しており、人的資本開示の広がりとともに、国内の発信も海外に近づいていくと考えられます。
海外企業は、横ばいや低下といった結果もそのまま開示する傾向があります。国内の具体例では、S評価やAA評価の達成など、成果を前面に出す構成が多く見られました。
海外では、GitLabがエンゲージメントの前年比3ポイント低下を、Deutsche Telekomが2021年以降ほぼ横ばいで推移していることを公開しています。ただし、これは国の違いというより発信の場の違いによる部分が大きいと考えられます。
国内でも日本ペイントは、全体スコアが横ばいだったことを率直に書いています。
国内企業は会社と社員の関係づくりに、海外企業は働き方の自由度と検証の仕組みに重心を置いています。国内の具体例は、評価制度の改定やベースアップ、理念や戦略の浸透、役員との対話など、納得感と一体感を高める施策が中心でした。
海外の具体例は、BufferやAtlassianによる働く場所・時間の柔軟化と、それを支える社内実験や短い定点調査が中心です。国内は納得感と一体感、海外は自律と検証が、それぞれの軸になっているといえます。
海外企業は、結果を細かく分解して測る傾向があります。国内の具体例では、モチベーションクラウドやGeppoなど外部ツールの格付けと、業界平均との比較で成果を語る例が多く見られました。
海外では、Deutsche Telekomが年齢や性別などの属性別に結果を公開しています。United Utilitiesも、ウェルビーイングや健康・安全、自分の声が届いているかといった項目別に結果を示しています。
どの施策が誰の何に効いたのかを見極めるには、こうした分解が欠かせません。
国内企業は危機感から、海外企業は働き方の戦略的な選択から取り組みを始める傾向があります。国内の具体例では、サイボウズの離職率28%や、ブレイン・ラボの在宅勤務で社員の状態が見えにくくなったことなど、目の前の課題への対応が出発点でした。
海外では、BufferやAtlassianのように、コロナ禍を機に週4日勤務や働く場所の自由化を経営判断として選んだ例が目立ちます。
国内企業は管理職を育てる対象と捉え、海外企業は経営層への信頼を課題と捉える傾向があります。国内の具体例では、Recovery Internationalの毎週の管理職研修や、日本ペイントの部門長への結果開示など、管理職の育成と巻き込みが目立ちました。
海外では、GitLabの直属の上司への肯定率が85%と高い一方、リーダー層は62%、変化の成功は56%にとどまっています。弱点は、経営層への信頼や変化の進め方に表れています。
11社の具体例からは、国や規模を問わず共通する7つのポイントが見えてきます。要点は次のとおりです。
それぞれのポイントの詳しい進め方は、次の記事で解説しています。
※関連記事:働きがいを高めるには?成功企業に共通する7つのポイントと最初にやるべき施策
この記事では、7つのポイントの具体的な進め方に加え、最初にやるべき4つの施策と、施策を進めるうえでの注意点を紹介しています。自社で働きがい向上に取り組む際の手順書として、あわせてご覧ください。
A:育児休業制度や選択型人事制度の導入、評価基準の明確化、社内実験による施策の検証などがあります。
A:国内は評価制度や理念浸透など会社と社員の関係づくりに、海外は働き方の自由度や社内実験など検証の仕組みに重心を置く傾向があります。
A:調査をやりっぱなしにせず社員の声に応えること、そして施策を小さく試してから広げることです。
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