「幸福学」研究の第一人者、前野隆司氏と共同研究したサーベイ『ソラミドWell-being』を通して、次世代の自由でフラットな組織を模索する


部下の元気がない。以前は前向きだった人が、最近どこか静かになっている。会議での発言も少なくなり、新しい仕事への反応も以前ほど強くない。
そんな変化を前にすると、リーダーは自分のリーダーシップを疑います。関わり方が足りなかったのか。期待の伝え方を間違えたのか。もっと強く導くべきだったのか。そう考えるのは自然なことです。
けれど、部下の元気のなさをすべてリーダーシップ不足として見てしまうと、本人の内側で起きている変化を見落としてしまうことがあります。
今回は、部下の停滞とリーダーの関わり方について、スカイベイビーズ代表の安井に話を聞きました。
スカイベイビーズの「ウェルビーイング力向上支援サービス」の詳細は下記ボタンから!

クリエイティブディレクター・代表取締役。クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。2016年より山梨との二拠点生活をスタート。
――部下の元気がないとき、リーダーはまず何を見たらよいのでしょうか?

リーダーの言葉や態度、雰囲気などは、部下の状態に大きく影響します。自分の関わり方を振り返ること自体は、とても大切です。
ただ、部下の変化をすべて「自分のリーダーシップが足りないからだ」と決めつけてしまうと、リーダー自身も苦しくなりますし、部下の中で起きていることも見えにくくなります。
特に中堅社員の部下は、仕事の進め方や組織内での自分の役割はある程度わかっていますが、その一方で、「このままでいいのか」「自分は何のために働いているのか」という問いも持ちやすくなる。
それは、やる気がなくなったというより、やる気の置き場所がわからなくなっている状態かもしれません。
だから、リーダーシップで引っ張る前に、その人の中で何が組み替わろうとしているのかを見る。そこから始める必要があると思います。
――「やる気の置き場所がわからない」というのは、どういう状態なのでしょうか?

表面的には、熱量が下がったように見えて、実際には、熱量が消えたというより、向きが変わっている状態です。
若い頃は、仕事を覚え、成果を出し、周囲から認められることが、そのまま成長実感につながりやすいものです。しかし、ある程度経験を積むと、「どうすれば成果を出せるか」よりも、「この成果に自分はどんな意味を感じているのか」という問いのほうが大きくなります。
会社に不満があるわけではないし、仕事が嫌になったわけでもない。けれど、以前のようには動けない。一時的に熱量を注げる場所を見失っている状態と言ってもいいかもしれません。
このような人生の中盤に起きる揺らぎは、一般的にはミッドライフクライシスと呼ばれます。「人生の中盤で起きる問い直し」だと私は捉えています。
大事なのは、部下が元気を失っているように見えるとき、その背景には、仕事の能力やモチベーションだけでは扱いきれない、人生と仕事の接続の揺らぎがあるかもしれない。そう考えてみることです。
――ただ単に元気がないだけではなく、ミッドライフクライシスに陥っている場合もあるわけですね。

そうですね。ミッドライフクライシスは、必ずしも劇的なものではありません。むしろ、周囲が「なんかちょっと元気ないな。気のせいかな」と見過ごしてしまうくらい、静かに現れることが多いと思います。
たとえば、会議で以前ほど発言しなくなる。新しい企画に対して、前のように前のめりにならない。任された仕事は進めているけれど、自分から踏み出す感じが弱くなる。会社の未来について話しても、どこか自分ごとになりきっていない。
リーダーからすると、はっきりした問題として扱いにくい変化です。大きなミスがあるわけではなく、急に成果が落ちているわけでもない。ただ、以前あったはずの活力が少し薄くなっているように見える。こうした状態は、組織の中で見過ごされやすいと思います。
――本人も言葉にしにくい状態ですよね。

自分でも、何が起きているのかを説明できないことが多いと思います。
「困っています」と言える問題なら、周囲も支援しやすい。けれど実際には、「困っているのかどうかもよくわからない」「不満があるわけではないけれど、前のようには動けない」という状態があります。
だから、面談で「何か困っている?」と聞いても、「特に大丈夫です」と返ってくることがある。本人にとっては嘘をついているわけではありません。まだ、自分の中で言葉になっていないのだと思います。
そのようにミッドライフクライシスは、わかりやすい問題として現れるというより、仕事と自分の人生との接続が少しずつ弱くなる形で現れる。職場で見える「元気のなさ」の背景には、そうした意味の揺らぎがあるのかもしれません。
――元気のない部下に対して、期待を伝えたり、新しい役割を渡したりするリーダーは多いと思います。

期待を伝えることも、機会を渡すことも大切です。ただ、本人がこうした人生の問い直しの中にいる場合、それだけでは動き出せないことがあります。
理由は、本人が失っているのが能力ではなく、仕事の意味との接続だからです。挑戦する力が消えたわけではないのに、「なぜ自分がこれをやるのか」が見えにくくなっている。この状態で目標や役割だけが増えると、本人には「また頑張らなければならないことが増えた」と感じられることがあります。
たとえば、新しいプロジェクトを任されたとします。以前なら前向きに受け取っていた人が、今回は表情が晴れない。「ありがたいです」とは言うけれど、どこか心が動いていない。
その背景には、「このまま成果を出し続けた先に何があるのだろう」「自分は会社にとって都合のいい人になっているだけではないか」「この役割は、自分の人生とどうつながっているのだろう」という問いがあるかもしれません。
この問いに向き合っている人に必要なのは、さらに強いリーダーシップで引っ張ることではありません。一度立ち止まり、自分の言葉で仕事の意味を捉え直せる余白です。
――では、リーダーは、何をすればいいのでしょうか?

まず、答えを出そうとしすぎないことだと思います。
リーダーは、部下の人生の問いを代わりに解くことはできません。でも、その問いが存在してもいい空気をつくることはできます。
「元気になってほしい」と思うほど、リーダーは何かをしたくなります。面談を増やしたり、励ましたり、役割を調整したりする。ただ、本人がまだ言葉にならない問いの中にいるとき、関わりが増えるほど、かえって答えを求められているように感じることがあります。
大切なのは、背負いすぎず、見ないふりもしないことです。
「最近元気がないね」と評価するのではなく、「今、仕事との関係が少し変わっている時期なのかもしれない」と見てみる。それだけで、関わり方は少し変わります。
――一人の部下の不調が、組織全体にも影響を与えることもあると思いますか?

はい。私は影響すると思っています。
一人が迷っていること自体は問題ではありません。でも、その迷いを言葉にできず、「大丈夫です」と言う人が増え、本音を言いづらい雰囲気が組織全体に広がってしまうこともあります。
そうすると制度は変わっていないのに、挑戦する人が減る。違和感を飲み込むことが当たり前になる。気づいたときには、離職率やエンゲージメントスコアが思わしくない結果になっている。
そういうケースは珍しくありません。
――確かに、そのような組織課題を抱える企業は多いと思います。

だからこそ、数字に表れる前の小さな変化に目を向けることが重要です。
会議での沈黙や、雑談の質、社員が仕事について話すときの言葉に変化が出ることがあります。違和感があっても口にされなくなったり、誰かが迷っていることに周囲が気づかないふりをしたりする。そうした小さな変化は、すぐには問題として扱われにくいのですが、組織の活力には確実に影響します。
制度は整っているのに、現場の表情が晴れない。リーダーが発信しても、どこか響いていない。面談の場はあるのに、本音が出てこない。そういうとき、見るべきなのは施策の不足だけではありません。
組織の中で、仕事の意味や一人ひとりの揺らぎを受け止める回路が弱くなっている可能性があります。
――では、スカイベイビーズが考える組織活性化とは、どのようなものなのでしょうか。

人を元気にすることや、前向きにすることだけが、組織活性化ではないと思っています。むしろ、無理に前向きにさせようとするほど、本人の中にある揺らぎが見えにくくなることがあります。
大切なのは、一人ひとりが自分の言葉で、仕事の意味を語り直せる状態をつくることです。自分の迷いや揺らぎを、すぐに弱さとして扱われないこと。働きやすさだけでなく、働く意味や誇りを感じられる場面があること。
そういう土台があって、人はもう一度動き出せるのだと思います。
部下の元気がないとき、それはリーダーシップの失敗とは限りません。同時に、部下個人の問題として切り離してよいわけでもありません。それは、個人の人生の問いと、組織で働く意味が一度ずれているサインかもしれない。
だから、「どうすれば元気になるか」と急ぐ前に、少し問いを変えてみてもいいと思います。
この人は今、何を問い直しているのだろうか。何に意味を感じられなくなっているのだろうか。この組織には、迷いや揺らぎを言葉にできる余白があるだろうか。仕事の未来と、個人の未来がつながる感覚は残っているだろうか。
リーダーがそう見始めるだけで、関わり方は変わります。
部下の元気がない。会議で発言が減った。以前ほど挑戦しなくなった。そうした変化を見たとき、リーダーは自分のリーダーシップを疑います。
その振り返りは大切です。けれど、すべてをリーダーシップ不足として背負い込む必要はありません。
もしかすると、その人はいま、自分の人生と仕事の意味を静かに結び直そうとしているのかもしれません。そして組織もまた、人が自然体で働くための余白を問い直す時期に来ているのかもしれません。
人は、無理に前向きにさせられたときではなく、自分の揺らぎを否定されなかったときに、もう一度動き出せることがあります。
組織活性化とは、社員を無理に明るくすることではない。一人ひとりが、自分の言葉で仕事の意味を語り直せる余白をつくること。
スカイベイビーズは、まだ言葉になりきらない組織の違和感を、これからも丁寧に見つめていきます。
あなたの組織で、最近少し元気がないように見える人は誰でしょうか。
その人は本当に、やる気を失っているのでしょうか。それとも今、自分の人生と仕事の意味を、静かに結び直そうとしているのでしょうか。
無料相談やお問い合わせの予約は下記ボタンから!
※なお、スカイベイビーズのウェルビーイング力向上支援サービスページはこちらです。より詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
貴社の魅力を引き出す
ブランディングなら、
私たちにお任せください!