「幸福学」研究の第一人者、前野隆司氏と共同研究したサーベイ『ソラミドWell-being』を通して、次世代の自由でフラットな組織を模索する


心理的安全性に関する勘違いは組織でよく起こりがちです。中でもよく見られる代表的な誤解は以下の4つです。
本来の心理的安全性とは、単なる甘えや優しさではなく、高い成果を出すために厳しい意見も率直に交わせる環境を指します。本記事では株式会社スカイベイビーズの監修のもと、組織が陥りやすい罠や経営陣の認識をアップデートする実践的なアプローチを専門家の視点で紐解きます。
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株式会社スカイベイビーズ 代表取締役/クリエイティブディレクター
クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。スカイベイビーズでは、コーポレートサイト、採用サイト、オウンドメディアなどジャンルを問わず様々なWebサイトの制作・運用の支援まで幅広く手掛ける。
心理的安全性とは、チームの中で対人リスクをとっても大丈夫だと信じられる状態のことです。具体的には、無知や無能だと思われることを恐れず、素朴な疑問や失敗の報告を率直に行える環境を指します。
たとえば、会議で新しいアイデアを提案した際に、頭ごなしに否定されず建設的な議論ができる職場がこれに該当します。この状態が確保されることで、メンバーは余計な不安を抱えることなく学習や業務に集中でき、結果として組織全体の生産性やイノベーションの創出につながります。
心理的安全性という言葉が一人歩きしてしまい、本来の目的とは異なる解釈をされるケースが少なくありません。企業が陥りやすい代表的な4つの勘違いについて、学術的なエビデンスを交えながら整理します。
心理的安全性は、お互いに遠慮して誰も傷つけない居心地の良い雰囲気を作ることではありません。提唱者であるエイミー・エドモンドソン教授の研究論文でも、優しくすることとは異なると明確に指摘されています。
真の心理的安全性とはぬるま湯ではなく、チームの成果を高めるために率直な意見が言える状態のことです。波風を立てない職場は単なる馴れ合いの場になりかねません。
参考:https://hbr.org/2023/02/what-is-psychological-safety
心理的安全性は、無礼な振る舞いや自分勝手な発言を許可する免罪符ではありません。先述のエドモンドソン教授の研究でも、発言権を保証するものであり、思い通りになることを保証するものではないと警鐘を鳴らしています。
相手への配慮を欠いた批判や単なる愚痴を感情的にぶつける行為は、周囲の心理的安全性を著しく低下させます。互いへの敬意を前提としたうえで、建設的な意見を交わせる環境であることが重要です。
発言が少ない原因を、本人のメンタルが弱いからだと個人の問題にすり替えるのは誤りです。Google社が実施したプロジェクト・アリストテレスの研究結果でも、チームの生産性を決めるのは個人の能力や性格ではなく、チームの協力体制であることが証明されています。
心理的安全性は個人の性格特性ではなく、チーム全体で共有された環境の属性です。どんなに優秀な人でも不利益を被る職場では発言を控えるようになります。
参考:https://rework.withgoogle.com/intl/jp/guides/understanding-team-effectiveness
心理的安全性を高めると甘えが生じて成果への責任感が薄れるというのは、非常によくある誤解です。エドモンドソン教授が提唱する4つのゾーンでも示されている通り、心理的安全性と成果への責任は独立した2つの軸として存在しています。
| 成果への責任が高い | 成果への責任が低い | |
| 心理的安全性が高い | 学習・高パフォーマンスゾーン | ぬるま湯ゾーン |
| 心理的安全性が低い | 不安ゾーン | 無関心ゾーン |
私たちが目指すべきは、心理的安全性が高く、かつ成果への要求水準も高い学習・高パフォーマンスゾーンです。目標を下げて安心感を与えるのではなく、高い目標を達成するためにこそ心理的安全性が機能します。
こうした誤解は現場の社員にも起こりますが、経営陣やマネジメント層が勘違いをしている場合はより深刻な事態を招きます。経営陣の誤解がなぜ組織にとって致命的なダメージとなるのか、3つの視点から解説します。
組織には評価する側とされる側という権力の差が存在し、これが発言のしやすさに直結するためです。心理的安全性の本質である対人リスクを発生させる引き金は、常に上司や経営陣が握っています。
経営層がただ優しく接することだと勘違いして基準を下げたり、個人の性格の問題にすり替えたりすると、部下はそれに従うか諦めるしかありません。権力を持つ側の誤解は現場の力では修正しきれず、組織全体に波及してしまいます。
経営陣は組織の環境や仕組みを設計する責任者であり、その土台が間違っていると組織全体が機能不全に陥るためです。心理的安全性は個人の心持ちではなく、チームの環境やシステムの問題として捉える必要があります。
システムを作る側が本来の目的を見誤っていれば、現場で働くメンバーがどれほど優秀でも正しい組織文化は育ちません。環境設計の初期段階でのミスは、組織の根幹を揺るがす大きな課題となります。
言行不一致な対応は現場に強烈な不信感を生み出し、心理的安全性を根本から破壊してしまうからです。何でも自由に言えと伝えておきながら、いざ現場が失敗を報告すると厳しく叱責するような矛盾した状態がこれにあたります。
このような経験が続くと、現場の社員は結局黙っているのが一番安全だと学習してしまいます。一度失われたマネジメント層への信頼を取り戻すことは難しく、組織の成長が止まってしまいます。
経営層の認識をアップデートする際、過去のマネジメントを否定したり単なる精神論を押し付けたりするのは逆効果になります。反発を招くことなく、正しい認識を持ってもらうための実践的な4つのアプローチを紹介します。
説得する際は社員の働きやすさといった感情面ではなく、業績やリスク管理といった経営の言葉で伝えることが不可欠です。経営層は常に会社の利益創出や不祥事防止という重い責任を背負っているためです。
心理的安全性が低いと現場のミスや不正の報告が遅れ、致命的なコンプライアンス違反につながるリスクなどを具体的に提示します。組織の隠れた課題を早期発見し、イノベーションを生むための合理的な投資であると伝えることで納得感を得やすくなります。
導入にあたっては、経営陣が求める高い目標や成果への要求を決して下げてはいけないと伝えることが効果的です。経営層は心理的安全性をぬるま湯だと誤解し、結果として業績が落ちることを最も警戒しているためです。
高い基準を維持したまま心理的安全性を高めることで、初めて学習・高パフォーマンスゾーンに到達できるという論理を共有します。彼らが大切にしている厳しい基準を肯定することで、心理的安全性が組織成長の強力な武器であると理解してもらえます。
経営陣やリーダー層が日常的に抱えている組織の悩みに対し、心理的安全性が処方箋になると気づかせることが有効です。彼らもまた、若手が育たないことや現場から新しい提案が出てこないことに日々頭を悩ませているからです。
部下が指示待ちになっているのは能力不足ではなく、否定されるリスクを恐れていることが根本的な原因だと伝えます。自らのマネジメント課題を解決する具体的な手段として提示することで、当事者意識を持って取り組むようになります。
考え方やマインドを無理に変えようとするのではなく、明日から会議で使える具体的な行動ルールを定着させることが成功の鍵です。いきなり意識改革を求めると混乱や反発を招きやすく、行動から変えていく方が着実に意識の変化へつながるためです。
悪い報告を受けた際の第一声は絶対に怒らず感謝を伝えることや、リーダー自らが知識不足を認めて意見を求めることなどをルール化します。小さな行動の変化で部下の反応が変わるという成功体験を積むことで、経営陣の認識は自然とアップデートされていきます。
A:「ぬるま湯の職場である」「何を言っても許される」「個人の性格の問題である」「成果への責任が不要である」という4つです。
A:心理的安全性と成果への要求水準の両方を高く保ち、健全な意見の衝突ができる学習ゾーンを目指すことです。
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