ぶっちゃけ、目標って立てないとダメ?目標が合わない組織に起きていること

「今期の目標を立てましょう」と言われる。けれど、どこかしっくりこない。数字を置くこと自体は大切だとわかっている。進む方向をそろえる必要があることも理解している。

けれど、目標を立てた瞬間に、現場の感覚から少し離れてしまうことがあります。

目標があるのに、人が動かない。目標は達成しているのに、組織が元気にならない。目標を立てるほど、仕事が小さくまとまっていく。

そんな違和感があるとき、問題は「目標設定のやり方」だけではないのかもしれません。

スカイベイビーズでは、組織の活性化を「人を無理に前向きにすること」ではなく、人が自然体で働ける余白をつくることとして捉えています。目標は、組織を前に進めるための道具です。けれど、その道具がいつの間にか、人の感覚や可能性を狭めてしまうこともあります。

ぶっちゃけ、目標って立てないとダメなのか。目標が合わない組織では、何が起きているのか。代表・安井の視点からひも解きます。

Masato Yasui

クリエイティブディレクター・代表取締役。クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。2016年より山梨との二拠点生活をスタート。

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目標は必要。でも、万能ではない

――そもそも、組織に目標は必要なのでしょうか?

安井

目標は必要だと思います。組織である以上、向かう先を共有することは大切です。

何を優先するのか、どこまで進むのか、何をもって前進とするのか。そこが曖昧なままだと、チームとしての判断がばらつきやすくなります。

ただ、目標は万能ではありません。

目標を立てれば人が動くわけではないし、目標を細かくすれば組織が強くなるわけでもない。むしろ、目標の置き方によっては、人の視野が狭くなったり、仕事の意味が薄くなったりすることがあります。

私たちが見落としがちなのは、目標はあくまで道具だということです。

道具であるはずの目標が、いつの間にか目的になってしまう。そうなると、組織の空気は少しずつ硬くなります。

――たしかに目標が目的になってしまうと、本末転倒ですよね。

安井

本来、目標は「何のために進むのか」を助けるものです。ところが、目標そのものを達成することが中心になると、「なぜそれをやるのか」が後ろに下がってしまいます。

たとえば、売上目標を達成することは大切です。でも、数字だけが前面に出ると、顧客にどう向き合うのか、自分たちは何を大切にして仕事をするのか、という問いが見えにくくなることがあります。

目標を達成しているのに、現場が疲れている。数字は悪くないのに、会議の空気が重い。メンバーが自分の仕事を語るとき、どこか他人事のようになる。

そういうときは、目標が悪いというより、目標と仕事の意味が切れているのだと思います。

目標が合わない組織では、人が小さくなる

――目標と仕事の意味が切れたままの組織だと、どのような影響があると思いますか?

安井

人が小さくまとまっていく感じがあります。

目標と仕事の意味が合っている組織では、目標が人の力を引き出します。自分の仕事がどこにつながっているのかが見え、判断もしやすくなる。少し難しい目標でも、「やってみよう」と思える余白があります。

一方で、目標が合っていない組織では、目標が人を狭めます。達成しやすい範囲で仕事を組み立てるようになったり、数字に表れにくい大事なことが後回しになったりする。挑戦して失敗するより、目標を外さないことが優先されていく。

すると、仕事は管理しやすくなります。でも、活力は落ちていきます。

人は、管理されるだけでは動き続けられません。自分の判断や工夫が生きている感覚があるから、前に進める。目標がその感覚を奪ってしまうと、表面的には動いていても、内側の熱は弱くなっていきます。

――目標があることで、逆に挑戦しにくくなることもある。

安井

あると思います。

特に、目標が評価と強く結びつきすぎている組織では、失敗しないことが優先されやすくなります。

もちろん、評価は必要です。ただ、目標の未達がすぐに個人の能力不足や意欲不足として見られる空気があると、人は安全な選択をしやすくなります。

本当は試したいことがある。でも、目標に直結しないから後回しにする。

本当は違和感がある。でも、今の目標に水を差すようで言いにくい。

そうやって、組織の中から小さな挑戦や違和感が消えていきます。

これは、本人の主体性がないからではありません。目標の置き方が、主体性を出しにくくしていることもあるのです。

目標が合わないのは、現場が未熟だからではない

――目標に対してメンバーが乗ってこないと、リーダーは「意識が低いのでは」と感じることもありそうです。

安井

そう見えてしまうことはあるでしょうね。ただ、本人の意識の問題だけで見るのは少し危ういのではないでしょうか。

人は、意味を感じられない目標には力を出しにくいものです。逆に、多少大変でも、自分の仕事やチームの未来とつながっていると感じられれば、自然と力が出ることがあります。

目標が腹落ちしないとき、現場は必ずしも反抗しているわけではありません。言葉にできない違和感を持っているだけのこともあります。

この目標は、誰のためのものなのか。この数字を追うことで、何がよくなるのか。自分たちらしさは、この目標の中に残っているのか。今の現場の状態で、本当にこの目標を置いていいのか。

そうした問いが置き去りになると、目標は正しく見えても、人は動きにくくなります。

――目標そのものより、目標との関係性が大事ということでしょうか?

安井

同じ目標でも、置かれ方によって受け取られ方は変わります。上から降ってきた数字として受け取るのか、自分たちの意思が入った約束として受け取るのか。そこには大きな違いがあります。

人は、命令された目標には従うことはできても、自分の言葉で語れない目標には本気になりにくい。

だから、目標を立てるときには、「何を達成するか」だけではなく、「なぜこれを目指すのか」「この目標を、自分たちはどう解釈するのか」が大切になります。

目標が合わない組織では、この解釈の時間が足りていないことが多いと思います。

目標より先に、組織の空気を見る

――目標を立てる前に、リーダーは何を意識したほうがよいのでしょうか?

安井

個々ではなく、今の組織の空気をつぶさに見ることだと思います。

どれだけ正しい目標でも、組織の状態と合っていなければ、機能しにくくなります。メンバーに余白がないときに、大きな挑戦目標を置いても、前向きな挑戦ではなく、ただの負荷として受け取られることがあります。

逆に、組織に少し停滞感があるときには、目標を細かく管理するよりも、「何に意味を感じられなくなっているのか」を見る必要があるかもしれません。

数字に表れる前に、組織の空気は変わります。会議で本音が出なくなる。雑談が薄くなる。誰も反対しないけれど、誰も前のめりではない。

そういう状態で目標だけを更新しても、現場の温度は戻りにくいと思います。

――目標設定の前に、現場の温度を見るということですね。

安井

目標は、組織の温度と切り離せません。

同じ「前年比120%」という目標でも、組織の状態によって意味は変わります。挑戦として受け取れる状態もあれば、消耗の追加として受け取られる状態もある。

リーダーが見るべきなのは、目標の正しさだけではありません。その目標を受け取る組織の状態です。

今のチームに、その目標を自分たちの言葉で捉え直す余白があるか。違和感を言える空気があるか。達成できなかったときにも、学びとして扱える関係性があるか。

そこがないまま目標を置くと、人は目標に向かうのではなく、目標から身を守るようになります。

目標がいらないのではなく、目標だけでは足りない

――では、「目標を立てない」という選択もあり得るのでしょうか?

安井

目標をまったく立てないほうがいい、という話ではありません。

組織で仕事をする以上、方向性や基準は必要です。ただ、すべてを目標で管理しようとすると、人の動きはかえって鈍くなることがあります。

大事なのは、目標の手前にある問いです。

何を大切にして進むのか。どんな状態で達成したいのか。その目標は、人の力を引き出しているのか。それとも、人を小さくしているのか。

目標は、こうした問いと一緒に置かれると機能します。逆に、問いがないまま目標だけが置かれると、数字はあっても意味が薄くなります。

――目標を立てる技術よりも、目標を扱う姿勢が問われる。

安井

そうですね。目標設定の方法論はたくさんあります。定量目標、定性目標、OKR、KPI。どれも役に立つ場面があります。

ただ、どの方法を使うか以上に大切なのは、その目標が組織の中でどう扱われているかです。

目標が、人を問い詰める道具になっているのか。それとも、対話を生む道具になっているのか。管理するための線になっているのか。それとも、進む方向を確かめるための仮置きになっているのか。

目標は、置いた瞬間に完成するものではありません。進みながら何度も意味を確認し直すものです。

だから、目標が合わないと感じたときは、目標そのものを否定する前に、その目標について話せる空気があるかを見たほうがいいと思います。

スカイベイビーズが大切にしている目標との距離感

――スカイベイビーズでは、目標とどのように向き合っているのでしょうか?

安井

私たちも、目標を置かないわけではありません。事業を進める以上、数字も見ますし、やるべきことも決めます。

ただ、目標を人の上に置かないようにしたいと思っています。

目標は、人を縛るためではなく、人が自分の力を出しやすくするためにある。そう考えています。だから、目標だけを見て「できた、できなかった」と判断するのではなく、その目標に向かう過程で何が起きているのかを見ます。

誰かが無理をしすぎていないか。大事にしたい仕事の質が落ちていないか。数字に出ない違和感が置き去りになっていないか。その人らしい力の出し方ができているか。

こうしたことも含めて見ないと、目標は簡単に人を消耗させます。

――目標を「人の上に置かない」という表現が印象的です。

安井

目標を絶対化しない、ということかもしれません。

もちろん、決めたことに向き合う責任はあります。約束を曖昧にしていいわけではありません。

ただ、目標のために人が不自然になるなら、その目標との距離感を見直したほうがいい。

人が自然体で力を出せているとき、目標は力になります。逆に、人が自分の状態を隠し、違和感を飲み込み、無理を前提にしているとき、目標は重さになります。

目標そのものより、その目標の周りにどんな空気があるか。そこを見たいと思っています。

組織活性化とは、目標で人を動かすことではない

――最後に、目標と組織活性化の関係について聞かせてください。

安井

組織活性化というと、全員が同じ目標に向かって前向きに走っている状態をイメージする人も多いと思います。もちろん、そういう瞬間は大切です。

でも、本当に活性化している組織は、目標に対して違和感を言える組織でもあると思います。違和感を言い合える組織のほうが、長い目で見ると強いとも言えるでしょう。

目標で人を動かすのではなく、人が動き出せる目標を一緒につくる。そのためには、数字の前に、組織の空気を見る必要があります。

スカイベイビーズが大切にしているのは、無理に人を前向きにすることではありません。人が自分の言葉で、仕事の意味や違和感を語れる余白をつくることです。

その余白があるから、目標も生きたものになります。目標が生きたものになるから、人は管理されるのではなく、自分の意思で進みやすくなるのです。

目標と組織の関係をどう捉えるか

目標は、組織にとって大切な道具です。ただし、目標があるだけで人が動くわけではありません。

目標が人の力を引き出しているのか。それとも、人を小さくまとめているのか。

その違いは、目標の数字だけではわかりません。目標の周りにある空気に表れます。

違和感を言えるか。意味を問い直せるか。達成の仕方について話せるか。人が自然体で力を出せているか。

ぶっちゃけ、目標は立てたほうがいい。けれど、目標だけでは足りません。

大切なのは、目標を置いたあとも、人が自分の言葉でその意味を語れること。そして、目標が人を縛るものではなく、人の力を引き出すものとして扱われていること。

あなたの組織の目標は、人を前に進めているでしょうか。それとも、気づかないうちに、人を小さくまとめてしまっているでしょうか。

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