「本音で話せる職場」はどう作られる?なぜスカイベイビーズは自己開示できるメンバーが集まるのか?

会議では、ちゃんと発言している。1on1もある。雑談の時間もつくっている。

それでも、なぜか本音は出てこない。

「大丈夫です」「特に問題ありません」「なんとかやれています」

そう言われると、表面上は何も起きていないように見えます。

けれど、後になって「実はずっとしんどかった」「あの時かなり迷っていた」と知ることがあります。

制度がないわけではない。話す機会もある。なのに、本当の状態は見えない。その違いは、何なのでしょうか。

スカイベイビーズでは、メンバー同士が比較的自己開示しやすいと言われることがあります。ただ、それは「仕事に必要なことだけ共有しましょう」という意味ではありません。

仕事のことだけではなく、家族のこと、身体のこと、最近感じていること、少し言いづらい悩みまで、その人が話したいと思ったことを気楽に置ける。そういう状態を大切にしています。

もちろん、何でも話さなければいけないわけではありません。言いたくないことまで言う必要はない。ただ、職場だからといって「仕事の顔」だけで生きる必要もないと考えています。

自分の背景や事情を少し知ってもらうことで、関係が楽になることがある。仕事の進め方が変わることもある。相手の見え方が少しやわらかくなることもある。

「本音で話せる職場」は、どうつくられるのか。なぜスカイベイビーズでは、少しずつ自分を開ける人が増えていくのか。

メンバーが話していた実感も手がかりにしながら、代表・安井の視点からひも解きます。

Masato Yasui

クリエイティブディレクター・代表取締役。クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。2016年より山梨との二拠点生活をスタート。

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職場で「仕事の顔」だけにならなくていい

――スカイベイビーズは、自己開示できるメンバーが多いと言われることがあります。最初からそういう人が集まっているのでしょうか?

安井

もともと多少はあると思います。

スカイベイビーズは、「自然体で生きること」や「自然体で働くこと」を大切にしています。そういう考え方に共感した人が入ってくるので、自分のことをまったく話したくないという人は、そもそも少ないのかもしれません。

ただ、それだけではないと思います。

入社した時から、今と同じように話せていた人ばかりではありません。最初は少し様子を見るし、「ここまで言っていいのかな」と考える人もいる。

それでも、少し話してみた時に、変に重く受け止められなかったり、関係が壊れなかったりする。その経験が積み重なることで、だんだん話せる範囲が広がっていくのだと思います。

――自己開示というと、プライベートなことや弱みを話すイメージがあります。

安井

私は、そういうことまで含めて話せることは大事だと思っています。

もちろん、何でも話せということではありません。家族のことも、過去のことも、悩みも、全部開示してくださいという話ではない。言いたくないことは言わなくていいし、話す範囲は本人が決めればいい。

ただ、職場では仕事のことだけ話せばいい、というのも少し違うと思っています。

人は、仕事をしている時だけ別の人格になるわけではありません。家族との出来事があれば、その日の気分にも影響します。身体のことや、生活の中で抱えている不安が、仕事の進め方に関係することもある。

だから、職場で「仕事の顔」と「業務上の事実」だけで生きる必要はない。その人の全体性を少しずつ知れることは、関係をつくるうえで大事だと思います。

――プライベートなことまで話すことが、仕事にも影響するのでしょうか?

安井

影響すると思います。

自分の事情や状態を少し知ってもらったことで、やりやすくなることはあります。

たとえば、身体的な特性がある。家庭の事情がある。ある場面だけ少し苦手なことがある。逆に、こういう環境なら力を出しやすいというものがある。本人が何も言わなければ、周囲にはわからないことも多い。

でも、少し話しておくと、「じゃあ、こうしたほうがやりやすいね」と調整できる。それは特別扱いとは少し違います。

相手を知ったうえで、どう関わると自然かを一緒に見つけているだけです。自己開示には、関係を楽にする機能があると思います。

「言った後にどう受け取られるか」が、次の自己開示を決める

――一度話してみた経験が、その後の話しやすさに影響するのでしょうか?

安井

かなり影響すると思います。自己開示って、話す前より、話した後の経験のほうが大きいんですよね。

勇気を出して何かを話した時に、場が急に重くなる。必要以上に心配される。特別扱いされる。勝手に解釈される。そういう経験をすると、「次からは言わないでおこう」となります。

逆に、「そうなんだね」と一度受け取ってもらえる。必要なら、「じゃあどうしたらやりやすい?」と一緒に考えてくれる。それくらいフラットに受け止めてもらえると、次も少し話してみようと思える。

自己開示しやすい組織かどうかは、話した人の勇気だけではなく、受け取る側の反応で決まる部分が大きいと思います。

――スカイベイビーズのメンバーは、「フラットに受け止めるのがうまい」ということ。

安井

意識をしている人が多いのだと思います。誰かが自分のことを話した時に、聞いた側がすぐ意味づけしすぎない。

「そういうことがあるんだね」「あなたはそう感じているんだね」

そのようにして、まず、そのまま受け取る。

たとえば、何か苦手なことを話した人に対して、「じゃあこの人は弱い人なんだ」と決めない。何か個人的な事情を話した人に対して、「かわいそうだから守ってあげなければ」と決めない。

その人が話した事実と、こちらの解釈は別です。

ここが混ざると、自己開示した瞬間に相手から見た自分が変わってしまう。それが怖いから、人は話せなくなります。

自己開示しやすい場には、「話した一部分だけで、その人全体を決めない」という感覚が必要だと思います。

――スカイベイビーズでいう「全体性」とは、どういうことでしょうか?

安井

その人を、職場で見えている一部分だけで捉えないということだと思います。

会社では、どうしても役割で人を見ます。デザイナー。営業。マネージャー。若手。リーダー。でも、その人はその役割だけで生きているわけではありません。

誰かの親でもあるかもしれない。子どもでもある。パートナーでもある。何かに悩んでいるかもしれないし、仕事とはまったく関係ないことに夢中になっているかもしれない。

そういうものを全部詳しく知らなければいけないわけではありません。

ただ、「この人は職場で見えている姿だけの人ではない」と思えているかどうかは大きい。その前提があると、少しプライベートなことを話した時にも、それを異物として扱わずに済みます。

自己開示は、「言う側」と「受け取る側」の共同作業

――自己開示しやすい雰囲気は、どうつくればいいのでしょうか?

安井

片方だけに求めてもつくられないと思います。「もっと本音を言ってください」と言うだけでは難しい。話す側にも怖さがあります。

こんなことを言ったら、どう思われるんだろう。評価が下がるんじゃないか。面倒な人だと思われないか。

一方で、聞く側も、何を返せばいいかわからないことがあります。だから、自己開示はお互いの歩み寄りです。

話す側は、少しだけ開いてみる。聞く側は、その言葉を急いで評価せず受け取る。その往復が積み重なって、「ここでは話しても大丈夫」という関係ができます。

――リーダーがメンバーの本音を引き出したい時、何が大切でしょうか?

安井

言い出した側が先にやることだと思います。自分は何も話さないのに、「あなたのことをもっと教えてください」と言われても、かなり難しいですよね。

自分の迷いや、不安だったこと、うまくできなかったことを少し話してみる。場合によっては、仕事とは直接関係ないことでもいいと思います。最近家でこんなことがあったとか、今こういうことで少し気持ちが揺れているとか。

そうすると相手も、「ここではそういう話をしてもいいんだ」と思える。

もちろん、リーダーが何でも話せばいいということではありません。でも、自分だけ安全な場所にいて、相手にだけ自己開示を求めるのは違う。先に少し口を開くことは大事だと思います。

――自己開示を促す場をつくると、つい深い話を期待してしまうこともあります。

安井

いきなり深い話をしなくていいと思います。自己開示には、段階があります。

少し言いづらかったことを言ってみる。最近ちょっと疲れていると話してみる。家であった出来事を少し話す。仕事で気になっていたことを置いてみる。

そういう小さなところから始めればいい。それを話しても大丈夫だったという経験ができると、次はもう少し話せる。

人間関係って、急に深くなるものではありません。一歩出して、相手も一歩出す。その繰り返しで近づいていく。

だから、「本音を話せる組織をつくろう」といって、いきなり全員に深い自己開示を求めるのは、むしろ逆効果になることもあると思います。

――場をつくればいいというものでありませんよね。

安井

機会があること自体には意味があります。ただ、場を用意しただけでは十分ではありません。そこで話したことがどう扱われるかのほうが大事です。

話した内容が別の場所で勝手に使われる。評価に結びつく。必要以上に解釈される。

そういうことがあれば、制度として自己開示の場があっても、誰も本音は話さなくなります。場そのものより、「その場で話したことをどう受け止めるか」という日常の姿勢のほうが大きいと思います。

組織が自己開示を「制度化」しすぎると苦しくなる

――本音が出にくい職場では、どんなことが起きているのでしょうか?

安井

「正しいことしか言えない」状態になっていることが多いと思います。

会議では、仕事として正しい意見を言う。1on1では、「大丈夫です」と答える。仕事中は、仕事に関係することだけを話す。それ自体が嘘というわけではありません。

でも、その奥に「少ししんどい」とか、「家のことで今ちょっと余裕がない」とか、「本当は迷っている」とか、「最近このことがすごく嬉しかった」というものがあっても置けない。

そうなると、人はどんどん「職場用の自分」だけで生きるようになります。その状態が長く続くと、本人もしんどいですし、周囲もその人の状態を見誤りやすくなります。

――自己開示できることと、仲が良いことは同じなのでしょうか?

安井

少し違うと思います。仲が良い人には話せる、というのは普通ですよね。

でも、組織で必要なのは、特定の仲良しグループの中だけで本音が出ることではありません。

仕事で関わる人同士が、必要な範囲で自分の状態や背景を伝えられること。「この人とは親友だから何でも話せる」ということではなく、「この人には、仕事以外のことも少し含めて、自分のことを話しても大丈夫」と思える関係です。

――自己開示を組織文化として広げる時、注意したほうがいいことはありますか?

安井

「自己開示しましょう」を義務にしないことだと思います。話したくないことは、話さなくていい。

プライベートなことまで気楽に話せることは大切ですが、「気楽に話せる」と「話さなければいけない」は全然違います。

その日の状態によっても、話せることは違います。自己開示が多い人を「組織にフィットしている人」と評価するようになると、本末転倒です。

大切なのは、話す量ではありません。

話したい時に話せる。言いたくないことは言わなくていい。そして、話したことで扱われ方が急に変わらない。その自由があることです。

自己開示が強制された瞬間、それは自然体から離れてしまうと思います。

組織活性化とは、本音を「言わせる」ことではない

――改めて、なぜスカイベイビーズでは自己開示が生まれやすいのでしょうか?

安井

いくつかのことが重なっているのだと思います。

まず、「自然体で生きる」という考え方そのものに、ある程度共感している人が集まっている。そして、「職場では仕事の顔だけでいなければいけない」という前提があまり強くない。

会議やワークショップの中にも、自分の状態や最近の出来事を話せる機会がある。誰かが少し個人的なことを話しても、必要以上に意味づけせず、比較的フラットに受け取る人が多い。それを何度も経験している。

おそらく、一つの制度が自己開示を生んでいるわけではありません。

小さく話す。そのまま受け取ってもらう。関係が少し深くなる。また少し話してみる。その繰り返しが、今の空気をつくっているのだと思います。

――自己開示と組織活性化は、どうつながるのでしょうか?

安井

本音がたくさん飛び交っている組織が、必ずしもいい組織だとは思いません。何でも言えばいいわけではないし、全員が深い話をする必要もない。

大事なのは、「職場ではこの顔でいなければいけない」と必要以上に自分を切り分けなくて済むことです。

仕事の進め方に違和感がある。今は少し余裕がない。家のことで気持ちが落ち着かない。逆に、最近すごく嬉しいことがあった。そういうことも、その人をつくっている一部です。

必要な時にそれを言葉にできると、本人も無理をしすぎずに済みますし、周囲もその人をもう少し立体的に理解できます。

組織活性化は、人を無理に明るくしたり、本音を言わせたりすることではありません。一人の人を、役割だけではなく全体として見られる関係があること。そこが大事なのだと思います。

「本音で話せる職場」は、人を仕事の顔だけで見ない

本音で話せる職場をつくろうとすると、制度を考えたくなります。

1on1を増やす。チェックインを入れる。自己開示のワークショップを開く。どれもきっかけにはなります。

けれど、それだけで人は話せるようにはなりません。

大切なのは、誰かが少し自分を開いた時に、その言葉をどう受け取るかです。

勝手に意味づけしない。その一部分だけで人を決めない。すぐに解決しようとしない。そして、自分も少しずつ開いてみる。その小さな往復が重なることで、「ここでは仕事の顔だけでいなくてもいい」という感覚が生まれます。

スカイベイビーズは、自己開示そのものを目的にしているわけではありません。人が仕事上の役割だけに自分を閉じ込めず、生活や感情も含めた一人の人として、自然体で誰かと関われること。そのための関係や余白を大切にしています。

あなたの組織では、メンバーを「仕事をする人」としてだけ見ていないでしょうか。そして、その人が仕事の外側も少し含めて自分を話した時、それをそのまま受け取れる関係があるでしょうか。

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※なお、スカイベイビーズのウェルビーイング力向上支援サービスページはこちらです。より詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

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