人的資本経営はなぜ必要?求められる理由とメリット・手順を解説

「人的資本経営はなぜ必要と言われているのか?」その答えは、企業価値の源泉がモノから人へと変化し、以下の理由で企業の生き残りに直結するからです。

  • 無形資産(イノベーションや技術)が競争力を決めるため
  • 少子高齢化による人材獲得競争と流動化が起きているため
  • ESG投資の拡大など市場の評価基準が変化したため

本記事では、求められる背景から具体的な導入手順、取り組むメリットまでを解説します。ウェルビーイング経営支援のプロである株式会社スカイベイビーズが監修しており、経営層が押さえるべきポイントを網羅しています。

組織の持続的な成長に向けた第一歩として、ぜひ参考にしてください。

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この記事の監修者
Masato Yasui

株式会社スカイベイビーズ 代表取締役/クリエイティブディレクター
クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。スカイベイビーズでは、コーポレートサイト、採用サイト、オウンドメディアなどジャンルを問わず様々なWebサイトの制作・運用の支援まで幅広く手掛ける。

人的資本経営はなぜ必要なのか(背景と理由)

人的資本経営が必要な最大の理由は、企業価値の源泉が工場や設備から人へと根本的に変わったためです。 ここでは、人を単なるコストではなく資本と捉え、投資すべき対象へと変化した具体的な背景や理由を解説します。

無形資産が競争力を決める時代になったため

現代のビジネスでは、データや技術などの無形資産が企業の競争力を左右します。 かつては工場や設備などの有形資産が利益を生み出していましたが、デジタル化が進む現在ではイノベーションを生み出す人材こそが最も重要な資産です。

人を単なる労働力とみなして投資を渋ることは、新しい価値の創造を放棄することに等しいと言えます。 人材へ適切に投資し、働きがいのある環境を整えることが、企業の持続的な成長に直結するのです。

少子高齢化による深刻な人材不足と流動化のため

日本の労働市場において、少子高齢化に伴う人材獲得競争の激化は企業の死活問題となっています。 終身雇用が前提ではなくなり、優秀な人材ほど自身の市場価値を高められる環境を選んで転職する時代になりました。

企業が社員の成長機会や働きがいを提供できなければ、採用も定着も見込めず、事業の存続すら危ぶまれます。 選ばれる企業になるためにも、人材への積極的な投資姿勢を示す経営戦略が不可欠です。

ESG投資の拡大など市場の評価基準が変わったため

投資家や金融市場において、企業の将来性を測る指標として非財務情報の重要性が高まっています。 特に環境・社会・ガバナンスを重視するESG投資において、社会領域の中心となるのが人的資本への取り組みです。

過去の財務実績だけでなく、将来の価値創造に向けて多様な人材が活躍できる環境を整備しているかが厳しく問われます。 人的資本への投資を怠る企業は持続可能性がないと判断され、資金調達の面でも不利になるリスクがあります。

人的資本の情報開示が義務化されたため

2023年3月期から上場企業を対象に、有価証券報告書における人的資本情報の開示が義務化されたことも大きな理由です。 企業は人材育成方針や社内環境整備の状況を、具体的な数値目標とともに公表することが求められるようになりました。

これは国を挙げて人材投資を促進する強力なルール変更であり、非上場企業であっても取引先からの評価に影響を与え始めています。 透明性を持って人的資本に関する情報を発信することが、社会的な信頼構築に繋がります。

人的資本経営の普及を後押しする重要なキーワード

人的資本経営は単独で存在するのではなく、さまざまな新しい概念と密接に連動しています。 ここでは、経営層が必ず押さえておくべき重要なキーワードと、それらが人的資本経営とどのように関係しているのかを解説します。

人材版伊藤レポート

人材版伊藤レポートとは、経済産業省が人的資本経営のあり方や実践方法をまとめた重要な指針です。 経営戦略と連動した人材戦略の策定や、経営陣の積極的な関与が明記されており、多くの企業がこれを参考に改革を進めています。

国が人材投資の重要性を説いたことで、人事主導から経営トップ主導の全社的な取り組みへと移行しました。 

※参考:https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/report2.0.pdf

ウェルビーイング

ウェルビーイングとは、従業員が身体的・精神的・社会的に良好な状態であることを指し、人的資本の価値を最大化する土台となります。 心身が健康で心理的安全性が高い環境でなければ、イノベーションや高い生産性は生まれません。

私たち株式会社スカイベイビーズも、慶應義塾大学の前野隆司教授とともに独自の計測ツールを開発するなど、この領域の研究と実践的な支援を行っています。 ウェルビーイングの向上なくして、人的資本経営の成功はあり得ないと言えます。

生成AIの台頭

生成AIの普及により、定型業務が自動化される一方で、人間にしか生み出せない創造性や高度な課題解決力の価値が急騰しています。 この劇的な環境変化に適応するためには、新しい技術を使いこなすためのリスキリングが組織全体で不可欠です。

AI時代において企業が競争力を保つには、人材ポートフォリオを抜本的に見直し、人ならではの価値を創出できる人材へ重点的に投資することが急務となっています。

パーパス経営とDE&I(多様性)

企業の存在意義を示すパーパスの明示と、多様性を尊重するDE&Iの推進は、優秀な人材を惹きつける鍵です。 働く価値観が多様化する中、会社の目指す方向性と個人の目標が共鳴することが最大の動機付けになります。

また、変化の激しい時代に同質性の高い組織はリスクとなるため、多様な背景を持つ人材の摩擦から新しい価値を生み出す環境づくりが欠かせません。 これらは、人が最大限に活躍するシステムを構築するうえで不可欠な要素です。

人的資本経営を導入・実践する手順

人的資本経営の導入は、流行りの施策から手をつけるのではなく、経営戦略からの逆算で進めることが重要です。 ここでは、企業が着実に実践するための4つの基本手順を解説します。

  1. 経営戦略と人材戦略の連動
  2. 現状の可視化とギャップの把握
  3. ギャップを埋める投資施策の実行
  4. 指標によるモニタリングと情報開示

経営戦略と連動した人材像を定義する

まずは経営目標の達成に必要な理想の人材ポートフォリオを明確に言語化します。 新規事業の創出や海外展開など、自社の戦略を実現するためにどのようなスキルを持つ人材が何人必要かを具体的に定義することが出発点です。

ここが曖昧なままでは後の教育や採用の方向性がブレてしまいます。

現在の人材データを可視化しギャップを把握する

次に自社に所属する従業員の現在のスキルや経験をデータとして棚卸しします。 そのうえで最初に定義した理想の姿と現在地との間にどれだけの質的および量的な差分があるかを客観的に測定します。

勘や経験に頼るのではなくデータに基づいたギャップの把握が適切な人材投資の前提条件となります。

ギャップを埋めるための人材投資を実行する

理想と現実の差分が明確になったらそれを埋めるための具体的な施策を実行します。 戦略的採用や既存社員のリスキリングに加え、パフォーマンスを最大化する環境整備も重要です。

特に従業員が心身ともに健康で働けるウェルビーイングの土壌を整えることが、すべての施策の効果を高める鍵となります。

指標を設定して効果測定と情報開示を行う

実行した施策が機能しているかを測定するために適切な指標を設定して定期的に改善します。 エンゲージメントスコアなどをモニタリングし、その成果を社内外へ開示します。

自社の人材戦略をストーリーとして市場に伝えることで投資家からの評価や採用力の大幅な向上に繋がります。

人的資本経営に取り組む企業のメリット

人的資本への投資はコストではなく、中長期的に必ず財務的なリターンとして回収できる先行投資です。 ここでは、企業が人的資本経営に取り組むことで得られる3つの具体的なメリットを解説します。

採用コストと離職コストを削減できる

最大の直接的メリットは、従業員の定着率が向上し、採用や離職にかかるコストを大幅に削減できることです。 従業員が「この会社は自分に投資し、価値を高めてくれる」と実感できれば、組織へのエンゲージメントは自然と高まります。

人材不足が事業縮小に直結する現代において、一人が辞めるごとに生じる数百万円規模の採用費用や再教育コストの流出を防げる意義は非常に大きいです。 働きがいのある環境を整えることは、結果的に採用競争力そのものを強化することにも繋がります。

生産性が向上しイノベーションが生まれる

経営戦略に直結したスキルを従業員が習得することで、事業の実行スピードと質が飛躍的に向上します。 特に、新しい技術や知識を身につけるリスキリングは、既存事業の効率化だけでなく新規事業の創出にも直結します。

また、ウェルビーイングが担保された組織では心理的安全性が育つため、AI時代に不可欠な非連続なアイデアや現場からの業務改善が生まれやすくなります。 社員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる土壌が、企業全体のイノベーションを後押しするのです。

取引先や金融機関からの評価・信頼が向上する

人的資本への投資姿勢は、社外からの評価や信頼を獲得するための強力な武器になります。 上場企業であれば株価の向上やESG投資の呼び込みに直結しますが、未上場の中小企業にとっても無関係ではありません。

人材を大切にし、持続的に成長できる強靭な組織であるという事実は、銀行からの融資審査や大手企業からのサプライチェーン選定において競争優位性として働きます。 社会的な信頼を得ることは、企業の長期的な安定経営に不可欠な要素です。

人的資本経営はなぜ必要なのかに関するまとめ

Q:なぜ今、人的資本経営が必要なのですか?

A:企業価値の源泉が工場などの有形資産から人へ変化したためです。深刻な人材不足やESG投資の拡大により、人を資本と捉えて投資することが企業の持続的な成長に直結します。

Q:導入することでどんなメリットがありますか?

A:定着率向上による採用・離職コストの削減や、生産性向上によるイノベーションの創出、取引先や市場からの社会的な評価向上が挙げられます。

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