クォーターライフクライシスとは?20代〜30代に辛い時期が訪れる原因と、向き合い方

社会人になり、仕事にも少しずつ慣れてきた。学生の頃よりできることは増えたし、自分で生活もできている。周囲から見れば、少しずつ大人になっているように見える。

それなのに、なぜか不安になることがあります。

「この仕事を続けていていいのだろうか」「自分には、もっと向いていることがあるんじゃないか」「周りは前に進んでいるのに、自分だけ何者にもなれていない気がする」

転職したほうがいいのかもしれない。もっと成長しなければいけないのかもしれない。そもそも、自分は何をしたいのだろう。選択肢はあるはずなのに、選べない。

こうした20代から30代前半に起きやすい揺らぎは、「クォーターライフクライシス」と呼ばれることがあります。

スカイベイビーズでは、これを単なる「若者のキャリア迷子」とは捉えていません。社会に出て初めて、自分は何を大切にして、どんな基準で人生を選んでいくのか。その土台そのものをつくっている時期に起きる揺らぎだと考えています。

なぜ、選択肢が増えたはずなのに苦しくなるのか。「成長しなければ」という焦りの奥には、何があるのか。本人や職場は、この時期にどう向き合えばいいのか。

代表・安井の視点からひも解きます。

Masato Yasui

クリエイティブディレクター・代表取締役。クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。2016年より山梨との二拠点生活をスタート。

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クォーターライフクライシスは、「自分は何者なのか」がわからなくなる時に起きる

――クォーターライフクライシスとは、どのような状態なのでしょうか?

安井

20代から30代くらいは、自分が何者なのかを真剣に考える時期だと思います。

就職して、仕事を始める。恋愛や結婚について考える人もいる。学生の頃とは違って、自分で選ばなければいけないことが一気に増えます。

その時に、「自分はこういう人間だから、こう生きたい」という軸がまだはっきりしていない。

もちろん、普通に悩むこと自体は自然です。ただ、正解が見つからないことへの不安がどんどん大きくなって、「自分は何者なのかわからない」「どれを選んでも間違っている気がする」という状態になると、かなり苦しくなる。

クォーターライフクライシスは、そんなふうに自分の人生の判断基準がまだ定まらない中で、不安が強くなっている状態だと思っています。

――ミッドライフ・クライシスとは、どこが違うのでしょうか?

安井

ミッドライフ・クライシスは、ある程度「自分はこういう人間だ」というものをつくって生きてきた人が、「このままでいいのか」と問い直す時期です。

仕事上の役割もあるし、家族との関係もある。その中で、これからの自分をどう置き直すのかを考える。

クォーターライフのほうは、その前なんですよね。まだ「自分はこれでいく」というもの自体が固まっていない。

だから、「今までの自分を再編集する」というより、そもそも自分の判断基準をつくっている途中で迷っている。そこが大きな違いだと思います。

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――20代で仕事や将来に悩むこと自体は珍しくありません。通常の悩みとの違いはありますか?

安井

そこはかなりわかりにくいと思います。

就職したばかりなら、仕事がうまくできなくて悩むのは当然です。初めての転職で迷うこともあるし、「この仕事は自分に向いているのかな」と考えることもある。

たとえば、先輩より営業がうまくできなくて不安になる。これは、もしかすると単純にスキルがまだ足りないという話かもしれません。経験を積めば解決する可能性もある。

でも、「営業がうまくできない」から、「そもそもこの仕事を選んだこと自体が間違っていたんじゃないか」「自分は働くことに向いていないんじゃないか」と、自分の人生そのものまで揺れ始めると少し話が変わります。

問題が一つのスキルではなく、「自分はどう生きるのか」に広がっていく。周りだけが前に進んでいるように見える。選択肢はあるのに、何を選んでもしっくりこない。思い描いていた大人になれていないように感じる。

そういう状態になると、クォーターライフクライシスに近づいているのだと思います。

もしかして今、「目標」より「判断基準」に迷っているのかもしれない

――この時期に不安が強くなるのには、どのような背景があるのでしょうか?

安井

20代、30代は、周りの変化がものすごく見えやすい時期なんですよね。

同じ時期に社会人になった人が昇進する。転職する。結婚する。独立する。すごく楽しそうに働いている人もいる。SNSを開けば、そういう変化がさらに見える。

すると、自分だけ何も決まっていないような感覚になりやすい。

でも実際には、それぞれ違う人生を生きています。誰かが先に何かを決めたからといって、自分も同じタイミングで答えを出さなければいけないわけではない。

それでも、周囲の選択がたくさん見えると、「自分も早く何者かにならなければ」と焦ってしまう。クォーターライフクライシスには、この焦りもかなり大きいと思います。

――それまで順調に進んできた人にも起きるのでしょうか?

安井

むしろ、ある程度「こう進めばいい」と示された道をちゃんと歩いてきた人が、社会に出て急に迷うことはあると思います。

学校では、次の目標が比較的わかりやすいですよね。試験に受かる。いい成績を取る。志望校に入る。就職活動をして会社に入る。周囲からも「ここを目指せばいい」と言ってもらえる。

ところが会社に入った後は、急に答えがなくなります。

営業で活躍すればいいのか。管理職を目指すのか。転職するのか。専門性を高めるのか。結婚するのか。どこで暮らすのか。誰かが正解を用意してくれるわけではありません。

「いい学校に行って、安定した会社に入れば大丈夫」と思っていたのに、実際そこに着いてみたら思っていたほど満たされない。その時に初めて、「そもそも自分は、なぜここを目指していたんだっけ」と考えることになる。

それまで使ってきた判断基準が急に使えなくなることも、クォーターライフクライシスの苦しさなのだと思います。

――クォーターライフクライシスかどうか判断できる方法があれば、教えてください。

安井

クォーターライフクライシスは、「仕事が嫌」「転職したい」といった一つの悩みだけでは見えにくいものです。もし最近、何を選んでもしっくりこない感覚があるなら、次の問いを一度自分に向けてみてもいいかもしれません。

  • クォーターライフクライシスチェックリスト
    • 周りの同世代が、自分よりずっと先に進んでいるように感じる
    • 転職したいと思うけれど、次に何をしたいのかはよくわからない
    • 今の仕事が嫌というより、「この仕事を選んだ自分は正しかったのか」と考えることがある
    • 以前目標にしていたものを達成しても、思っていたほど嬉しくなかった
    • SNSで同世代の仕事や暮らしを見ると、焦りや不安が強くなる
    • やりたいことを聞かれると、答えがその時々で大きく変わる
    • 選択肢はあるのに、「間違えたくない」という気持ちが強くて選べない
    • 自分らしさや向いている仕事を、早く見つけなければいけないように感じる
    • 「もっと成長しなければ」と思っているのに、どこへ成長したいのかはよくわからない
    • 「この先どう生きたいか」を考えると、期待よりも不安のほうが大きくなる
安井

これは診断ではありません。何個当てはまったかより、「なぜ、この問いが気になったんだろう」と見てみることのほうが大切です。

仕事を変えれば解決するのか。スキルを身につければ安心できるのか。それとも、自分が何を基準に選んでいるのか、その前提から考え直す必要があるのか。

そこを分けてみるだけでも、悩みの見え方は少し変わります。

クライシスの中では、答えを急がない

――クォーターライフクライシスに入った時は、どう抜け出せばいいのでしょうか?

安井

急いで答えを出そうとしないほうがいいと思います。自分が何を大切にして生きるのかという話なので、一瞬で考えて答えが出るようなものではありません。

自分についての認識そのものを組み直す必要があることもある。だから、周囲から「こうすればいいじゃん」と答えを渡されても、あまり解決しないと思います。

転職すればいい。資格を取ればいい。恋人をつくればいい。

それで一時的に動けることはあるかもしれません。でも、自分がなぜ不安だったのかがわからないままだと、また別の場所で同じ問いが出てくる。

自分の中で何が絡み合っているのかを、ゆっくり見ていく必要があると思います。

――時間をかければ、自然に解決していくものなのでしょうか?

安井

時間が経てばいいという話ではありません。大事なのは、自分が何に不安を感じているのかを見つけることです。

たとえば、友人が転職したのを見て焦ったとします。そこで「自分も転職しなければ」と考える前に、なぜ焦ったのかを考える。

置いていかれるのが怖いのか。今の仕事に納得できていないのか。自分には挑戦する勇気がないと思っているのか。

同じ「転職した人を見て焦った」でも、中身は全然違います。自分が納得できるところまで、感情の出どころを少しずつ見ていく。そこを飛ばして行動だけ変えても、なかなか落ち着かないと思います。

「本当は何を望んでいるのか」を探しにいく

――考えれば考えるほど、余計に不安になることもありそうです。

安井

自分と向き合う時ほど、まずフラットになれる状態をつくったほうがいいと思います。

不安でいっぱいの時に、「人生について考えよう」としても、全部悪い方向に見えてしまうことがあります。人によって、整う方法は違います。

温泉に行くと落ち着く人もいる。散歩すると頭が整理される人もいる。好きなものを食べる、友達と話す、一人になる。

何でもいいと思います。

「こういう状態になると、自分は少し落ち着いて考えられる」というものを知っておく。

一度そこに自分を持っていってから、今何に悩んでいるのかを見る。クライシスの時に、自分を整える方法を知っていることは結構大きいと思います。

――悩みと向き合うには、どんな方法がありますか?

安井

一人で考え続けるのが難しければ、誰かと一緒に整理するのもいいと思います。最近だと、コーチングのようなものも一つの方法だと思います。

大事なのは、「次は何を目標にするか」を決めることではなく、自分が今まで何を前提に選んできたのかを知ることです。

なぜ安定した会社に入りたかったのか。なぜその仕事が自分の天職だと思ったのか。なぜ周囲と同じように進めないと不安になるのか。

自分では当たり前だと思っていたものを、少しずつ問い直していく。

その先に、「本当はこういう状態でいたかったんだ」と見えてくるものがあるかもしれません。大げさな答えを見つける必要はありません。

まずは、自分が本当は何を望んでいるのかを、他人の正解と切り離して見つけていくことだと思います。

若手が迷っている時、目標設定を急がない

――職場で、部下や後輩がクォーターライフクライシスのような状態にいる場合、どう関わればよいでしょうか?

安井

まず、急がせないでほしいと思います。組織では、どうしても目標設定をしたくなります。

「次はこれを目指そう」「半年後にはここまでできるようになろう」「まず小さな成功体験をつくろう」

もちろん、それが有効な時もあります。

でも、クォーターライフクライシスで揺れている時は、目標がないことが問題ではない場合があります。目標を選ぶための判断基準が揺れているんです。

自分が何を大切にしているかわからない状態で、「じゃあ次の目標はこれ」と決めても、その目標に納得できない。むしろ真面目な人ほど、その目標に向かって頑張りすぎて、さらに苦しくなることもあります。

だから、何を目指すかより先に、「この人は何を基準に選ぼうとしているのか」を一緒に考える。そこを急がないことが大事だと思います。

――1on1では、どんな会話ができるとよいでしょうか?

安井

キャリアの話になると、すぐ「次に何をしたい?」と聞きたくなると思います。でも、本人がそれに答えられない時に、何度も目標を聞いても苦しくなるだけです。

そういう時は、「今、何に引っかかっているのか」を話すほうがいい。

今の仕事の何が嫌なのか。逆に、どんな瞬間は少し楽しいのか。誰を見て焦っているのか。何ができない自分を一番責めているのか。

答えを出すためというより、その人が自分の感覚を少しずつ言葉にできる時間をつくる。上司がすべて解決する必要はありません。

むしろ、急いで方向を決めずに、一緒に迷えるくらいの距離感のほうが、この時期には必要なこともあると思います。

――急かされると、余計クォーターライフクライシスが深まることもありそうです。

安井

そうですね。若手に対して、会社もかなり早い段階から答えを求めることがあります。

「将来どうなりたい?」「3年後のキャリアは?」「どんな専門性を持ちたい?」

もちろん、考える機会自体はあっていい。

でも、20代で全部明確に答えられることが、本当に自然なのかということは考えたほうがいいと思います。

まだいろいろ試している最中なのに、「早く自分の軸を決めてください」と言われると、本人は焦ります。何者かになることを急かされる組織では、迷っている状態そのものが悪いことのように感じられてしまう。

まだ決まっていないことを許容できることも、若い人が自然体で働くためには必要だと思います。

クォーターライフクライシスは、「自分の基準」をつくる時間かもしれない

クォーターライフクライシスという言葉には、「危機」という意味が入っています。実際、その中にいる時は苦しいものです。

周囲は前に進んでいるように見える。自分だけ答えがない。何を選んでも後悔しそうで、動けなくなることもある。

でも、その迷いは、自分の人生を自分で選び始めたからこそ生まれているのかもしれません。

誰かから渡された「いい人生」の基準ではなく、自分は何を大切にしたいのか。すぐに答えを出さなくてもいい。目標を決める前に、自分が何を基準に選ぼうとしているのかをゆっくり見ていく。

そして、苦しい時には一人だけで考え続けず、誰かに話してみる。自分が整う時間を持つ。

スカイベイビーズは、迷いを早く終わらせることよりも、その迷いの中で自分の感覚を失わないことを大切にしています。

今のあなたは、本当に「次の目標」が見つからないのでしょうか。それとも、その目標を選ぶための「自分の基準」を、いまつくっている途中なのでしょうか。

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