組織の空気を変える「自分を出せる関係性」とは。スカイベイビーズのメンバーは、なぜ自己開示ができるのか

組織の中で、本音が出ない。会議では大きな反対もないのに、終わったあとに小さな違和感だけが残る。1on1をしても、部下は「大丈夫です」と言う。けれど、表情はどこか晴れない。

こうした状態を前にすると、リーダーは施策を見直します。会議の進め方を変える。1on1の頻度を増やす。評価制度や役割分担を整える。もちろん、それらは大切です。

ただ、その手前にあるものが見落とされていることがあります。それは、メンバーが自分の状態を言葉にできる関係性です。

弱さを見せたら評価が下がるかもしれない。迷いを話したら、未熟だと思われるかもしれない。本音を出して、場の空気を悪くしたくない。そんな遠慮や不安が重なると、人は少しずつ“正しいこと”だけを話すようになります。

スカイベイビーズでは、組織の活性化を「人を無理に前向きにすること」ではなく、人が自然体で働ける余白をつくることとして捉えています。そのために大切にしているものの一つが、自己開示です。

メンバーが自分の状態や違和感を言葉にできる組織では、何が起きているのか。自己開示は、組織の空気にどのように影響するのか。代表・安井の視点からひも解きます。

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Masato Yasui

クリエイティブディレクター・代表取締役。クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。2016年より山梨との二拠点生活をスタート。

自己開示は、組織が見落としやすい土台である

――組織にとって、自己開示はなぜ大切なのでしょうか

安井

多くの組織では、何か問題が起きると、制度や仕組みを見直そうとします。会議体を変える、評価制度を整える、1on1を増やす、役割を明確にする。どれも大切ですし、必要な場面もあります。

ただ、その前提として、人が自分の状態を言葉にできる関係性があるかどうかは、意外と見落とされていると思います。

自己開示というと、少し大げさに聞こえるかもしれません。プライベートを話すことや、弱みをさらけ出すことだと思われることもあります。でも、私たちが大事にしている自己開示は、もう少し日常的なものです。

今、自分にどれくらい余白があるのか。何に迷っているのか。どこに違和感があるのか。どんな仕事だと力が出やすいのか。逆に、今は何が難しいのか。

そうした自分の状態を、必要な範囲で言葉にできることです。

これがないまま組織を動かすと、みんなが表面上は問題なく進んでいるように見えて、内側では少しずつズレがたまっていきます。

――自己開示がないと、何が見えなくなるのでしょうか?

安井

一番大きいのは、組織の中にある温度差です。

同じ会議に出ていても、同じプロジェクトに関わっていても、人によって感じていることは違います。前向きに進みたい人もいれば、まだ腹落ちしていない人もいる。余裕がある人もいれば、実はかなり無理をしている人もいる。

でも、自己開示が少ない組織では、その違いが表に出ません。みんなが同じように納得しているように見える。実際には、内側に小さな温度差があるのに、それが見えないまま進んでしまう。

温度差があること自体が悪いわけではありません。組織には温度差があって当然です。立場も経験も、生活の状況も、見えている景色も違うからです。

問題は、温度差が見えないことです。

自己開示があると、「自分はここに少し不安がある」「この方向性は理解しているけれど、まだ腹落ちしていない」「今は前向きに走るより、少し整理したい」といった声が出てきます。

それによって、組織は初めて今の温度を知ることができます。温度がわからないまま火を強めても、人はついてきません。

自己開示は、仲良くなるためだけのものではない

――自己開示というと、仲の良さや心理的な近さの話だと思われることもあります。

安井

仲良くなることだけが目的ではありません。もちろん、お互いの背景を知ることで、話しやすくなることはあります。でも、自己開示の本質は、もっと仕事に近いところにあると思っています。

人は、自分の状態を隠したまま働くと、少しずつ無理が出ます。体調、家庭、価値観の変化、仕事への違和感、自分の得意不得意。そうしたものをまったく出さずに、常に“仕事上の正しい自分”だけでいようとすると、判断やコミュニケーションにズレが生まれます。

たとえば、ある人が最近発言しなくなったとします。周囲は「興味がないのかな」「納得しているのかな」と受け取るかもしれない。でも実際には、家庭の事情で余白がなくなっているのかもしれないし、今の仕事の意味を少し見失っているのかもしれない。

自己開示がない組織では、こうした背景が見えません。すると、見えないものを憶測で埋めることになる。これは、組織にとってかなり危うい状態です。

自己開示は、仲良しになるためのものではなく、憶測を減らすためのものだと思います。相手の状態を正確に知ることで、仕事の渡し方、声のかけ方、判断の仕方が変わる。そこに意味があります。

――自己開示というと、プライベートを話すことだと思われがちです。

安井

そこは誤解されやすいところです。

自己開示は、何でも話すことではありません。過去のつらい経験や家庭の事情をすべて共有する必要もない。無理に深い話をすることが、よい組織をつくるわけではありません。

大事なのは、「今の自分の状態が、仕事にどう影響しているか」を必要な範囲で言葉にできることです。

たとえば、「今は家庭の都合で夜の対応が難しい」「このテーマは少し苦手意識がある」「最近、仕事の優先順位に迷っている」「この会議で少し違和感がある」。こうした言葉が出るだけで、チームの動き方は変わります。

自己開示は、感情を全部出すことではなく、仕事を一緒に進めるために必要な自分の状態を共有することです。

スカイベイビーズでは、そこを大切にしていると思います。

自己開示できる組織には、「言っても崩れない」感覚がある

――自己開示ができる組織と、できない組織の違いはどこにあるのでしょうか?

安井

一番大きいのは、「言っても関係が崩れない」と感じられるかどうかだと思います。

多くの人は、本音を話したくないわけではありません。むしろ、どこかでは話したいと思っている。でも、話したあとにどう扱われるかわからないから、言わない。

弱さを見せたら評価が下がるのではないか。迷いを話したら、任せてもらえなくなるのではないか。違和感を言ったら、面倒な人だと思われるのではないか。

こうした不安があると、人は「大丈夫です」「問題ありません」「進めます」などの安全な言葉だけを選びます。

表面的にはスムーズに見えます。けれど、内側では小さなズレがたまっていく。やがて、急な退職、会議での沈黙、挑戦の減少、チームの停滞として表に出てくることがあります。

自己開示できる組織には、「言っても崩れない」という感覚があります。多少弱いことを言っても、すぐに評価に結びつけられない。違和感を出しても、場を乱した人として扱われない。迷いを話しても、未熟だと決めつけられない。

その感覚は、制度だけではつくれません。日々の小さな反応の積み重ねでつくられていきます。

――具体的には、どんな反応の積み重ねなのでしょうか?

安井

誰かが少し弱いことを言ったときに、周囲がどう受け取るかです。

たとえば、「ちょっと今、余裕がないです」と言った人に対して、「じゃあ無理だね」と切り捨てるのか、「何を調整すれば進められそうか」と一緒に考えるのか。「この方針に少し違和感があります」と言った人に対して、「反対なの?」と詰めるのか、「どのあたりに引っかかっている?」と聞けるのか。

こういう一つひとつの反応が、組織の空気をつくります。

人は、自己開示をしても大丈夫だった経験があると、次も少し話せるようになります。逆に、一度でも雑に扱われると、「ここでは言わないほうがいい」と学習します。

スカイベイビーズでは、誰かの発言をすぐに正解・不正解で裁かないようにしています。まだ言葉になりきっていない違和感でも、一度置いてみる。きれいに整理されていない気持ちでも、そこに何か意味があるかもしれないと見る。

自己開示は、話す側の勇気だけで成り立つものではありません。受け取る側の姿勢によって、出せるかどうかが決まります。

スカイベイビーズでは、弱さよりも「状態」を共有する

――スカイベイビーズでは、どのように自己開示が行われているのでしょうか?

安井

私たちは、自己開示を特別なイベントにはしていません。何か研修のように「今日は自己開示をしましょう」とやるよりも、日常の中で自然に状態を共有することを大切にしています。

たとえば、今どれくらい余白があるのか。何に引っかかっているのか。どこに違和感があるのか。どんな仕事なら力が出やすいのか。逆に、今は何が難しいのか。

そういう話が、普段の会話の中に出てくることが大切です。

自己開示というと、「弱さを見せる」という言葉で語られがちです。もちろん、弱さを出せることも大事です。ただ、スカイベイビーズでは、弱さというより「状態を共有する」という感覚に近いかもしれません。

人は常に同じ状態ではありません。調子がいいときもあれば、迷っているときもある。家庭や暮らしの変化で、働き方の前提が変わることもある。価値観が変化して、以前と同じ仕事に同じ意味を感じられなくなることもあります。

その変化を隠したまま働くと、本人も周囲も苦しくなります。

だから、「今の自分はこういう状態です」と出せることが大切です。それは甘えではなく、チームで仕事を進めるための情報共有です。

――状態を共有することが、仕事の質にも関わるのでしょうか?

安井

関わると思います。

たとえば、誰かが今かなり余白のない状態にいるのに、それが共有されていなければ、周囲はいつも通りの期待をかけます。本人は無理をする。結果として、仕事の質が下がったり、関係性にひずみが出たりする。

逆に、状態が共有されていれば、仕事の渡し方を変えられます。サポートの仕方も変えられる。場合によっては、今その人に任せるべきことと、少し待ったほうがいいことを見極められる。

自己開示は、やさしさのためだけにあるのではありません。仕事の質を守るためにも必要です。

自分の状態を出せる人がいる組織は、調整ができます。調整できる組織は、無理を前提にしなくて済む。無理を前提にしないから、長く自然体で働ける。

これは、スカイベイビーズが大事にしている感覚です。

自己開示できない組織では、人は“役割”だけになる

――自己開示が少ない組織では、何が起きるのでしょうか?

安井

人が、役割だけで見られるようになります。

上司、部下、営業、採用担当、制作担当、マネージャー。もちろん、組織には役割が必要です。ただ、役割だけで人を見るようになると、その人が今どんな状態で働いているのかが見えなくなります。

すると、仕事のやり取りは一見スムーズになります。誰が何をやるかは明確ですし、責任範囲もわかりやすい。ただ、人の輪郭はだんだん薄くなります。

「この人は今、何に迷っているのか」
「何に意味を感じているのか」
「どんなときに力が出るのか」
「何を抱えながら働いているのか」

そうしたことが見えないまま、タスクだけが流れていく。

この状態が続くと、組織は効率的に見えて、どこか冷たくなります。人が替えのきく機能のように扱われていくからです。

自己開示は、その人をもう一度“人”として見るための入り口です。

――役割だけになると、組織の空気も変わりそうです。

安井

変わります。

人が役割だけで扱われる組織では、失敗や迷いを出しにくくなります。なぜなら、役割を果たせていない自分は、価値がないように感じてしまうからです。

本当は少し不安がある。本当はこの進め方に違和感がある。
本当は今、力が出にくい。でも、役割上は言いにくい。

そうやって、言葉にならないものが組織の中にたまっていきます。

スカイベイビーズが大事にしたいのは、役割を超えて、その人の状態や背景まで含めて関わることです。もちろん、何でも許すということではありません。仕事としての責任はあります。

ただ、責任を果たすためにも、人としての状態を見ないといけない。

自己開示は、責任を曖昧にするものではなく、責任を健やかに果たすための土台だと思います。

リーダーに必要なのは、自己開示を求めることではない

――自己開示を増やしたい組織では、リーダーは何を意識すればよいのでしょうか?

安井

まず、「自己開示してほしい」と求めすぎないことだと思います。

自己開示は、求められたからできるものではありません。むしろ、求められるほど身構える人もいます。「何を話せばいいのか」「どこまで話すべきなのか」「話したあと、どう扱われるのか」と不安になる。

リーダーができるのは、自己開示を強要することではなく、自己開示しても大丈夫だと感じられる反応を積み重ねることです。

誰かが少し本音を出したときに、すぐ評価しない。違和感を言った人を、面倒な人として扱わない。弱さや迷いを、成長不足として片づけない。うまく言葉になっていない話を、急いで結論にしない。

そうした反応の積み重ねが、「ここでは話しても大丈夫かもしれない」という感覚につながります。

――リーダー自身の自己開示も必要でしょうか?

安井

必要だと思います。ただし、リーダーが何でもさらけ出せばいいわけではありません。

リーダーの自己開示で大切なのは、完璧な存在として振る舞いすぎないことです。迷っていること、考え中であること、まだ答えが出ていないことを、必要な範囲で言葉にする。それだけでも、場の空気は変わります。

リーダーが常に正解を持っているように見えると、メンバーは未完成の考えを出しにくくなります。逆に、リーダーが「ここはまだ考えている」「この判断には少し迷いがある」「みんなの違和感も聞きたい」と言えると、メンバーも自分の状態を出しやすくなる。

自己開示は、上から求めるものではなく、場ににじませていくものだと思います。

組織活性化とは、無理に明るくすることではない

――最後に、自己開示と組織活性化の関係について聞かせてください。

安井

組織活性化というと、元気な挨拶や前向きな発言、活発な会議をイメージする人も多いと思います。もちろん、それも一つの姿です。

でも、本当に活性化している組織は、明るいことだけを言える組織ではありません。迷いや違和感や弱さも含めて、必要なことが言葉にできる組織だと思います。

人は、常に前向きではいられません。調子のよい時期もあれば、立ち止まる時期もある。仕事の意味がはっきり見える時期もあれば、少し揺らぐ時期もある。

その揺らぎをなかったことにせず、組織の中で扱えること。
それが、自然体で働くためには大切です。

自己開示がある組織では、人が自分の状態を隠しすぎなくて済みます。隠しすぎなくて済むから、余計な緊張が減る。余計な緊張が減るから、本来の力が出やすくなる。

スカイベイビーズが大切にしているのは、無理に人を前向きにすることではありません。人が自分の言葉で、自分の状態や仕事の意味を語れる余白をつくることです。

その余白があるから、自己開示が生まれる。自己開示が生まれるから、組織の空気が見える。組織の空気が見えるから、人はもう一度、自然体で働きやすくなるのです。

最後に

自己開示は、何でも話すことではありません。弱さを競うことでも、プライベートをさらけ出すことでもありません。

自分の状態を、必要な範囲で言葉にすること。相手の状態を、決めつけずに受け取ること。まだ整理されていない違和感を、すぐに正解・不正解で裁かないこと。

その積み重ねが、組織の空気を少しずつ変えていきます。

スカイベイビーズのメンバーが自己開示できるのは、特別に話すのが上手いからではありません。人の揺らぎや未完成さを、仕事の邪魔ではなく、仕事をともにつくるための大切な情報として扱っているからです。

組織活性化とは、社員を無理に明るくすることではない。一人ひとりが、自分の状態を言葉にでき、自然体で力を出せる余白をつくること。

あなたの組織には、「大丈夫です」の奥にある小さな違和感を、安心して置ける場所があるでしょうか。

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