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人生や社会のウェルビーイングを目指して。次世代型組織ではたらく人のための「ウェルビーイング診断サーベイ」

近ごろ組織にとっても個人にとっても欠かせない指標のひとつとなりつつあるウェルビーイング。とはいえ、その状況はなかなか目に見えにくいもの。

そこでスカイベイビーズで開発を進めているのが、アンケートからユーザーのウェルビーイングの状態を測定する診断サーベイツール「ソラミドウェルビーイング」です。開発の背景や狙いなどを、代表取締役の安井省人から紹介します。

この記事の監修者
Masato Yasui

株式会社スカイベイビーズ 代表取締役/クリエイティブディレクター
クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。スカイベイビーズでは、コーポレートサイト、採用サイト、オウンドメディアなどジャンルを問わず様々なWebサイトの制作・運用の支援まで幅広く手掛ける。

次世代型組織ではたらく人のための「ウェルビーイング診断」がなかった

──スカイベイビーズが開発している診断サーベイツール「ソラミドウェルビーイング」について、まずは概要を教えてください。

安井

はたらくうえでのポジティブな状態を「ウェルビーイング」、ネガティブな状態を「イルビーイング」として、現在の状態を測定できるサーベイツールです。42問のアンケートに答えることで現状がレーダーチャート化され、「満たされている要素/改善していきたい要素」をチェックできます。

ご自身の状態だけでなく、同世代平均や同職種平均も見られるため、自分がもっとウェルビーイングにはたらくためにはどうすればいいかを考えるヒントになるでしょう。

まずは今春に個人向けのサービスとして公開しますが、近日中に法人向けにもリリース予定。「社員のウェルビーイングが低い」「この部署のウェルビーイングに改善の余地がある」など、企業やチームごとに状況をあきらかにできるため、対策がしやすくなると思います。

──スカイベイビーズは以前より「自然体で、生きる」を大きな理念として掲げてきました。サーベイツールの開発は、その概念を数値化する試みですね。

安井

まさに「自分たちが自然体であることを何かしらの形で数値化できないか?」という着想が、今回のサーベイツール開発のきっかけとなりました。ウェルビーイングのスコアを測り、定量的にデータを取得したいと思ったとき、それを可能にするサービスがなかったんです。

はたらく人のウェルビーイング診断自体は他にもあるのですが、その多くがヒエラルキー型組織を前提にしています。そうなると、スカイベイビーズも含む自律分散型組織やティール型組織などの次世代型組織に所属する人にとっては、答えにくい質問が多いんです。だったら新しく作ってしまおうと、慶應義塾大学大学院でウェルビーイングや幸福学を研究する前野隆司教授にコンタクトしました。

ティール型に代表されるような次世代型の組織は、世の中ではまだ若干ニッチな存在です。でも、今後はそうした組織のかたちが主流になっていくでしょうし、そのほうが世の中の幸福度が高まるはず。前野教授もその文脈を面白がってくださり、このたびの共同開発が実現しました。

ウェルビーイングにつながる項目を、丁寧に洗い出す作業

──今回の「ソラミドウェルビーイング」は、具体的にどのような部分が特徴的ですか?

安井

ウェルビーイングは「成長期待」「レジリエンス」「貢献実感」など、イルビーイングは「自己否定感」「不安・不服」「オーバーワーク」など、それぞれ7つの項目で測定されます。ウェルビーイングの7項目が高いと、気持ちよく仕事ができている状態だといえるわけです。

この項目を決めるのには、かなりディスカッションを重ねました。さまざまな企業ではたらく方々の実例をさらったり、前野教授が持っている因果関係のデータを参照したりしながら、次世代型組織に必要だと思われる要素を踏まえ、アンケートの設問とともに検討していきました。

開発チームの思い込みにとらわれないよう、本当にこの項目やアンケートの設問が正しいかを見極めるために、最終段階ではユーザー1000人に調査も実施しています。そこでは意外な事実も出てきました。

──意外な事実?

安井

ティール型組織には、偽りがないありのままの自分ではたらける状態を「全体性(ホールネス)」と呼ぶ概念があります。スカイベイビーズの理念とも共鳴する部分なので「ありのままの自分ではたらくことが幸福である」という前提に立って設問をつくっていました。

ところが、じつはその要素は、はたらくうえでの幸福度とそこまで相関関係がなかった。それよりも「ここではたらくことが自分の成長につながるか」といった「成長期待」のほうが、幸福度に強く関係していたんです。

本当は自然体であることと幸福度の関係も見せたかったけれど、そこは実情に合わせて、より相関の強い「成長期待」とそれにまつわる設問を優先して採用しました。

おなじく、次世代型組織ではたらく人々は社会全体に目が向いているケースが多いことから、ウェルビーイングの要素として「社会貢献」「社会の変革」といったキーワードが出てくるかと思いきや、そうでもなく……案外そのあたりは幸福度との関係性が低いようでしたね。

──サーベイを開発する作業のなかにも、大きな気づきが生まれているんですね。

安井

そうなんですよね。とくに発見だったのは「Aの要素があれば幸せである」が「Aの要素がなければ幸せでない」とはイコールにならないこと。でも「Bの要素がなければ幸せである」は「Bの要素があると不幸だ」という相関もある。たとえば、自分の成長を感じられれば幸せだけど、感じられなくても不幸とは限らない。でも、オーバーワークにならない環境は幸せだし、オーバーワークは不幸……というわけです。それらがきれいな表裏にならないのは、ひとつの気づきでした。

もうすぐテスト環境ができるので、スカイベイビーズ社員のスコアが出せるのも楽しみですね。どんなスコアになるかは予想がつきませんが……(笑)。きっと気づきがあるでしょうし、データを公表して、改善のアクションにつなげたいと思っています。

企業や個人が、改善の一歩を踏み出すきっかけに

──安井さんは、「ソラミドウェルビーイング」を、ユーザーにどう役立ててほしいと考えていますか?

安井

2040年に向けて、世界的にウェルビーイングを社会の指標のひとつにしようという動きもみられています。ただ、一企業の一現場レベルではまだそれほどの実感がありません。

「ウェルビーイング」を冠した商品開発などが増えていますが、社員一人ひとりがそのマインドを意識して施策を打ったり、コミュニケーションを変えたりするほどの動きは出てきていないのが現状です。

でも僕たちは、ウェルビーイングを主体とした事業運営や事業開発は、まったく不可能ではないと考えています。日常的にウェルビーイングを考え、新たな挑戦を始める会社が少しでも増えるように、まずはサーベイでの見える化が大切。

「ソラミドウェルビーイング」は、その糸口になるものです。各企業や部署のリアルな状況を把握して、一歩を踏み出すきっかけにしてほしいと思っています。

──サーベイで結果が出たあとのフォローも、スカイベイビーズの事業として考えているのでしょうか。

安井

まだ具体的に動きはじめられてはいませんが、結果に応じてウェルビーイングを引き上げるためのコンサルティングサービスは考えたいと思っています。

ただ、そうした施策は「この数値が低いならこうしてください」と一概に言えるものではなく、それぞれの組織に合わせて考えていかなければいけないもの。どういう形でそれを事業化するかは検討が必要ですね。

少なくとも、切り口は「一人ひとり」にあると感じています。一人ひとりのウェルビーイングを高めることで組織のウェルビーイングが高まっていくし、その改善の過程で組織に問題があれば、組織を直接変えていくことにもつながるでしょう。

個人向けのサービスでもあるので、ウェルビーイングを高めるためのセルフワークショップやコーチングなどはすでに検討中です。客観的事実を数字でとらえたうえで、その改善に進むためのサポートをしていきたいとは思っています。まずは多くの方にサーベイを試してもらうことで、世の中のウェルビーイングスコアも明らかになっていきますから。

──最後に改めて、このサービスを通じて実現したいことや今後の展望を、聞かせてください。

安井

はたらく時間は、人生の6割ほどを占めています。その時間が幸せにならないと、人生全体が幸せにならないのはある程度あきらかです。だからこそ、はたらくうえでのウェルビーイングを見える化し、はたらく一人ひとりやその環境を整えていくことは、人生や社会のウェルビーイングを引き上げるために大きな意義を持ちます。

数値を測ったあと一人ひとりに向き合う活動も、まだまだこれからの課題。社会情勢などに合わせたサービスのブラッシュアップと合わせて、どんどん試行錯誤を重ね、ウェルビーイングを追究していきたいです。

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