「幸福学」研究の第一人者、前野隆司氏と共同研究したサーベイ『ソラミドWell-being』を通して、次世代の自由でフラットな組織を模索する


ウェルビーイング経営の効果は、社員の心身の健康や働きがいの向上と、会社の離職率低下や生産性向上という形で、社員と会社の両方に現れます。
本記事では、企業が公式に発信しているデータをもとに、社員にとっての5つの効果と会社にとっての6つの効果を解説します。監修は、幸福学の第一人者・前野隆司氏と独自のウェルビーイングサーベイ「ソラミドwell-being」を共同開発した株式会社スカイベイビーズです。
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株式会社スカイベイビーズ 代表取締役/クリエイティブディレクター
クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。スカイベイビーズでは、コーポレートサイト、採用サイト、オウンドメディアなどジャンルを問わず様々なWebサイトの制作・運用の支援まで幅広く手掛ける。
ウェルビーイング経営の効果は、まず社員一人ひとりの変化として現れます。ここでは、国内外の企業が公式に発信している事例をもとに、社員にとっての5つの効果を紹介します。
ウェルビーイング経営の最も直接的な効果は、社員の心身の負担が軽くなることです。米国の医療保険会社Aetnaでは、ヨガと瞑想のクラスに参加した社員のストレスが平均28%減り、睡眠の質も20%改善しました。
Bufferでは週4日勤務を1カ月試しただけで、ストレスの平均スコアが3.3から2.7(5点満点)に下がっています。SCSKのように、月平均残業時間を35.3時間から17.8時間へとほぼ半減させた企業もあります。時間と心の余裕が生まれることが、ほかのすべての効果の土台になります。
心身にゆとりが生まれると、仕事への前向きな気持ちも高まります。英国のAtom bankでは、週4日勤務の導入後に92%の社員が「仕事が楽しみ」と答えました。
J&Jの社員調査では、94%が「会社の目標達成のために一層努力したい」と回答しています。PHONE APPLIでも、組織の幸福度を測る独自サーベイのスコアが2020年度の4.83点から2024年度には5.18点(7点満点)に上がりました。
会社に大切にされている実感が、自ら力を発揮しようとする意欲につながっています。
ウェルビーイング経営は、社員に「働き方を自分で決める余地」をもたらします。サイボウズは「100人100通り」の働き方を掲げ、一人ひとりが働く時間や場所を選べる制度を整えました。
Bufferでは、週4日勤務を試した1カ月で自律性のスコアが4.3から4.5に上がっています。フラットな組織に移行したGCストーリーでも、社員が自分で仕事を決める働き方が根付きました。
心理学では、自分で選べているという感覚(自律性)は、意欲と幸福感を支える基本的な欲求の一つとされています。
人生の節目で仕事をあきらめずに済むことも、大きな効果です。パタゴニアは本社に保育施設を設け、2016年までの5年間、出産休暇を取った母親社員の100%が職場に復帰しました。
伊藤忠商事は朝型勤務の導入などを進め、女性社員の合計特殊出生率が2021年度に1.97まで上がっています。ロート製薬では女性の育児休暇の取得率・復職率が97.6%、丸井グループでは男性の育児休暇取得率が2019年度から100%を続けています。
ウェルビーイング経営は、職場の人間関係にも変化をもたらします。Googleが社内のチームを分析した研究「Project Aristotle」では、チームの成果に最も影響するのは、ミスをしても責められないと感じられる「心理的安全性」だとわかりました。
人間関係が最悪だった状態から社風を立て直した王宮では、コロナ禍の休業中に、社員が経営陣を励ます動画をつくって贈るほどの信頼関係が育っています。安心して本音を話せる職場は、社員の挑戦と成長を後押しします。
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社員の変化は、やがて会社の成果としても現れます。ここでは、定着や採用、生産性など、会社にとっての6つの効果を紹介します。
ただし業績への効果は、ほかの施策や市場環境の影響も受けるため、多くの企業は因果関係を断定せず「業績を支える土台」と位置づけています。
会社にとって、最も多くの事例で確認できる効果が離職率の低下です。サイボウズは2005年に28%だった離職率が、2013年には4%を切るまでに下がりました。
全社員の最低年収を引き上げた米国のGravity Paymentsは離職率が22%から6%に、SAS Instituteは業界平均の15%に対して約4%と公表しています。ミタニ建設工業のように、離職率を83%から0%へと改善した企業もあります。
人が辞めなくなれば、採用や育成にかかるコストも抑えられます。
社員を大切にする会社であることは、求職者にとって大きな魅力になります。給与を下げずに週4日勤務を導入した英国のAtom bankでは、求人への応募が49%増えました。
ミタニ建設工業は、人手不足が深刻な建設業界にありながら、2022〜2024年に採用した新卒社員が3年間1人も辞めていません。働きやすさそのものが「選ばれる理由」になり、入社後のミスマッチも減らせます。
人手不足が進む今、ウェルビーイング経営は採用戦略の一部にもなっています。
働く時間を減らしても、成果が下がるとは限りません。伊藤忠商事は朝型勤務の導入などにより、労働生産性が改革前の5倍以上になりました。
Gravity Paymentsは売上が650%伸び、社員1人あたりの売上も2倍になっています。味の素は総実労働時間を減らしながら、時間あたりの売上高を伸ばしました。
Bufferでも、週4日勤務の社員の91%が「幸福度も生産性も上がった」と答えています。休息と集中によって、仕事の質が上がった結果といえます。
社員の健康づくりは、コストの面でも効果を生みます。Aetnaでは、ヨガと瞑想による生産性の向上が、社員1人あたり年間約3,000ドルに相当すると試算されています。
ユニリーバは英オックスフォード大学と連携した分析で、健康上の理由による休業期間が短くなったことを確認しました。パタゴニアは、社内保育施設の費用の約91%を、税制上の優遇や離職の減少などで毎年回収できていると見積もっています。
ウェルビーイングへの支出は、コストではなく回収できる投資になりえます。
平時に社員を大切にしてきた会社では、危機のときに社員が会社を支える側に回ります。Gravity Paymentsでは、コロナ禍で売上が55%減ったとき、社員が自発的に一時的な減給を申し出ました。
売上がゼロになっても全員の給与を守った王宮では、社員が経営陣を励ます動画を贈っています。数字には表れにくいものの、こうした信頼関係は困難を乗り越える組織の底力になります。
環境の変化が激しい時代ほど、この効果の価値は高まります。
ウェルビーイング経営は、社外からの評価にもつながります。SCSKは経済産業省と東京証券取引所が選ぶ「健康経営銘柄」に11年連続で選ばれ、丸井グループも9年連続で選定されています。
中小企業でも、ミタニ建設工業や王宮のように、ホワイト企業大賞を受賞する例が増えています。こうした評価は、採用や取引先からの信頼、投資家へのアピールにもつながり、会社の価値を高める資産になります。
▼この章の参照元
ここまでご紹介しきれていないウェルビーイング経営の効果に関する疑問と答えをいくつかご紹介します。
ウェルビーイング経営とは、社員一人ひとりが身体的にも、精神的にも、社会的にも満たされた状態で働けるよう、組織の環境を整えていく経営手法です。対象は社員だけではありません。
社員の家族や取引先、株主、地域社会など、会社に関わるすべての人のウェルビーイングを追求する考え方でもあります。よく比べられる「健康経営」が社員の心身の健康を主な対象とするのに対し、ウェルビーイング経営は社会的な健康も含めた社員の「幸福」までを視野に入れている点が大きな違いです。
定義や注目される背景、健康経営との違いは「ウェルビーイング経営とは?健康経営との違い・事例・課題・取り組み方まで解説」で詳しく解説しています。
国内外13社の成功事例を分析すると、ウェルビーイング経営で成果を上げている企業には、次の7つの共通点がありました。
特に大切なのは、制度を導入して終わりにせず、効果を測りながら改善を続けることです。各コツの詳しい解説と企業事例は「ウェルビーイング経営の企業成功事例13選|国内外の施策と成功のコツを解説」で紹介しています。
あります。当社スカイベイビーズが実際にウェルビーイング経営に取り組むなかでも、次の4つの課題を実感しました。
ウェルビーイングは人によって捉え方が異なるため、まず「自社にとってのウェルビーイングとは何か」を定義し、測り方を決めることが欠かせません。また、仕事だけでなくプライベートにも関わるテーマだからこそ、安心して本音を話せる関係がないと、かえって社員の幸福を損なうおそれもあります。
当社では、独自のウェルビーイングサーベイの開発や年1回の健康・満足度調査、社内ミートアップや1on1などを通じて、これらの課題に向き合っています。詳しくは「ウェルビーイング経営に取り組んで実感した4つの課題【自然体で生きるために】」をご覧ください。
A:社員にはストレスの軽減や働きがいの向上、会社には離職率の低下や採用力・生産性の向上といった効果があります。
A:生産性や業績が伸びた企業もありますが、ほかの施策や市場環境の影響も受けるため、多くの企業は「業績を支える土台」と位置づけています。
A:理念や経営戦略に組み込み、社員が主役となる仕組みで、効果を測りながら改善を続けることが大切です。
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※なお、スカイベイビーズのウェルビーイング力向上支援サービスページはこちらです。より詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
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