「幸福学」研究の第一人者、前野隆司氏と共同研究したサーベイ『ソラミドWell-being』を通して、次世代の自由でフラットな組織を模索する


健康経営優良法人を取得しても意味ないと言われる最大の理由は、労働環境の改善という土台づくりを怠り、認定取得や施策の押し付け自体が目的化しているからです。制度を形骸化させず成果に繋げるには、以下の見直しが重要になります。
本記事では、企業のウェルビーイング経営支援を手掛ける株式会社スカイベイビーズ監修のもと、失敗する原因や自社の現状を見極める質問、成功への手順を解説します。
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株式会社スカイベイビーズ 代表取締役/クリエイティブディレクター
クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。スカイベイビーズでは、コーポレートサイト、採用サイト、オウンドメディアなどジャンルを問わず様々なWebサイトの制作・運用の支援まで幅広く手掛ける。
健康経営優良法人を取得しても効果を実感できない企業が多いのは、実態の伴わない運用になっているからです。現場のリアルな声から見えてきた主な理由を解説します。
認定の取得そのものがゴールになると、健康経営は形骸化してしまいます。対外的なアピールや採用力の強化だけを目的に指定の要件をクリアしても、社内の労働環境が改善されないためです。
実際に制度を導入しても残業削減やハラスメント防止が放置されたままでは、社内外から評判を落とす原因になります。形だけの認定取得は社員の会社に対する不信感を高める結果に終わります。
健康経営の推進にあたり、実務を担当する人事や総務への負荷が集中しすぎていることも大きな問題です。既存の業務に加え膨大な申請手続きやイベント企画を抱え込み、担当者自身が疲弊してしまうケースが多発しているためです。
他人のメンタル不調に対応し続けることで共感疲労を起こし、担当者が休職や離職に至る本末転倒な事態も起きています。推進役が健康を保てない仕組みでは意味がありません。
現場の状況を無視して施策を押し付けても、社員の行動変容は期待できません。日々の業務で忙殺されている社員に対して、ヨガイベントや健康アプリへの参加を求めても負担に感じられるだけだからです。
本来優先すべき業務の効率化や残業削減が置き去りのままでは、参加率は低迷し施策の効果も得られません。現場のニーズに合わない施策は冷ややかな反応を生むだけです。
経営陣が健康経営を人事に丸投げしている企業では、施策が持続しません。健康経営は投資であり、経営トップのコミットメントと適切な予算配分が不可欠だからです。
経営層が関与せず短期的な業績リターンのみを求めると、社内での優先順位が低下し担当者が孤立します。トップの本気度が伝わらない取り組みは組織全体に定着しません。
従来の健康経営が意味ないと言われる最大の原因は、守りの施策だけで終わっている点にあります。健康診断やストレスチェックといった義務的な対応は、不調を防ぐマイナスをゼロにする活動に過ぎないためです。
組織の活性化や生産性向上を目指すには、社員が活き活きと働けるゼロをプラスに変える環境づくりが欠かせません。守りの領域に留まっていては、期待する経営成果は生まれません。
健康経営が成果に結びつかない企業には、明確な構造上の共通点が存在します。自社が失敗パターンに陥っていないか確認するために、以下の特徴をご覧ください。
| 評価軸 | 成果が出る企業 | 逆効果になる企業 |
| 目的 | 離職防止など課題解決の手段 | 認定ロゴの取得や他社追随 |
| 経営陣 | 予算と時間を投資し自ら発信 | 人事に丸投げし短期的利益を要求 |
| 現場環境 | 最低限の労働環境が整っている | 長時間労働やハラスメントが放置 |
| 推進体制 | 専任者や外部リソースが存在 | 業務過多の担当者に押し付け |
長時間労働やハラスメントの放置は、健康経営を形骸化させる最大の原因です。労働環境という土台が崩れている状態で施策を導入しても、社員の不満を高めるだけだからです。
残業が月45時間を超える部署がある中でヘルスケア施策を実施しても、社員は早く帰らせてほしいと感じます。衛生要因である労働環境の改善を最優先で行うことが不可欠です。
認定ロゴの獲得を最終目的にすると、経営課題の解決に繋がりません。手段であるはずの認定取得が目的化すると、申請書類を整えることだけに意識が向くためです。
採用サイトにロゴを掲示できても社内の離職率や休職率が改善しなければ、施策への投資は無駄になります。何のために健康経営に取り組むのかという課題意識を明確にする必要があります。
経営層が関与せず現場へ丸投げする体制では、健康経営は成功しません。全社的な優先順位が上がらず、必要な予算や人員などのリソースが確保できないからです。
経営陣が口頭で推進を指示するだけで予算をつけなければ、現場は業務圧迫を感じて撤退します。経営課題として捉え、経営陣自らがコミットしてリソースを割くことが重要です。
社員の真のニーズを汲み取らない施策は、参加率が低迷し失敗に終わります。現場が求めている支援と会社が提供する施策に乖離があると、利用されないためです。
疲労困憊の現場にセミナー参加を強制しても参加率は伸びず、余計な負荷を与えてしまいます。アンケートなどで現場の声を収集し、実態に即した支援を行うことが求められます。
健康経営に対して即効性を期待しすぎると、途中で挫折することになります。従業員の意識変容や組織風土の改革には、中長期的な時間が必要となるからです。
導入後数か月で売上や生産性の向上といった直接的なリターンを求めると、取り組み自体が打ち切られます。長期的な人財投資として捉え、段階的に成果を測定していく姿勢が欠かせません。
健康経営優良法人を取得すべきか迷った場合、自社の現状を客観的に把握することが重要です。以下の質問を通じて自社の課題を明確にし、今取るべき行動を見極めてください。
健康経営に取り組み前に、労働環境という基礎が整っているかを確認する必要があります。長時間労働や有給休暇の不取得が日常化している状態では、どのような健康施策も効果を発揮しないためです。
月に45時間を超える残業が常態化している場合、まずは業務量の調整が最優先となります。土台となる労働環境を整えることが、健康経営を成功させる第一歩です。
健康経営の成功には、経営陣によるリソース投資の姿勢が不可欠です。十分な予算や人員の工数が確保できなければ、施策の継続的な運用が困難になるためです。
経営トップが事業課題と捉え、施策に必要な費用や業務時間の確保を承認しているか確認します。経営陣の明確なコミットメントがあって初めて、組織的な推進が可能になります。
推進を担当する部署や担当者に、十分な業務上の余力があるかを見極めることが大切です。既存業務で過負荷な状態に申請実務などを加えると、担当者の不調を招く危険があるためです。
業務全体の20パーセント程度を健康経営の企画や運用に充てられる体制があるかが基準となります。担当者が安心して推進できる環境を整えることが、持続可能な運用の条件です。
認定の取得ではなく、自社が解決すべき経営課題が言語化されているかを検証します。目的が不明瞭な取り組みは手段が目的化し、形骸化しやすいからです。
離職率の低下や若手の定着率向上など、具体的な数値目標や課題を設定できているか確認します。明確な課題意識を持つことで、実施すべき施策の方向性が定まります。
質問の回答結果に応じて、自社が今優先して取り組むべき行動が変わります。自社のフェーズに合わない施策を強行すると、組織に歪みが生じるためです。
以下の表を参考に自社の現在地を確認し、適切なステップを踏んでください。
| フェーズ | 推奨度 | 取るべきアクション |
| 取得推進フェーズ | 積極的に取得 | 土台が整っているため申請を進め組織の魅力を高める |
| 体制構築フェーズ | 一時保留 | 経営陣と目的を再定義し担当者のリソースを確保する |
| 労務改善フェーズ | 絶対に回避 | 最優先で長時間労働の是正や業務量の削減に集中する |
自社が労務改善フェーズに該当する場合は、認定申請を一度見送る判断が必要です。体制構築フェーズの場合は目的の再定義を行い、準備が整った段階で推進してください。
すべての問いをクリアしている企業のみが、認定取得による成果を享受できます。
なお、健康経営優良法人を取得する意味があるかどうか見極める方法のひとつとして、取得のメリット・デメリットをきちんと把握しておくことがあります。それぞれ下記のとおりです。
より詳しい解説は下記記事でしていますので、合わせてお読みください。
※関連記事:健康経営優良法人のメリットとデメリットは?取得すべき企業と失敗しない対策
健康経営を形骸化させず経営成果に繋げるには、概念のアップデートが必要です。従来の守りの施策から攻めのウェルビーイング経営へ移行するポイントを解説します。
健康経営の成果を高めるには、マイナスをゼロにする守りから、ゼロをプラスにする攻めの視点への転換が必要です。従来の健康経営は疾病予防や不調防止が中心であり、義務的な対応に留まりやすいためです。
社員のやりがいや幸福感を高めるウェルビーイング経営に取り組むことで、エンゲージメントや生産性の向上といった経営効果を引き出せます。健康配慮の先にある組織の活性化を目指すことが重要です。
| 区分 | 守りの健康経営 | 攻めのウェルビーイング経営 |
| 目的 | 疾病予防や不調者のリスク低減 | 活力向上とエンゲージメント強化 |
| アプローチ | マイナスをゼロにする環境整備 | ゼロをプラスに変える組織風土改革 |
| 期待効果 | 医療費の抑制や休職防止 | 離職率低下や生産性・採用力の向上 |
ウェルビーイング経営を推進する際は、段階的なステップを踏むことが成功の鍵です。基礎が不十分な状態で高度な施策を実施しても、現場の定着が進まないためです。
まずは労務環境の適法化で土台を固め、次に社員のやりがいや心理的安全性を高める環境づくりへ展開します。土台から順を追って積み上げることが、持続可能な組織改革に繋がります。
持続可能なウェルビーイング経営を実現するには、組織と社員の双方が利益を得られる仕組みづくりが不可欠です。会社からの施策提供だけでは一過性の取り組みで終わり、双方の成長に結びつかないからです。
社員一人ひとりが自律的に働き方やキャリアを選択できる風土を整え、個人の幸福と組織の成果を両立させます。双方に価値がある状態を作ることで、企業価値の持続的な向上を実現できます。
A:認定取得が目的化し、残業削減などの労働環境の改善を行わないまま施策を現場に押し付けているからです。
A:不調予防の守りの領域から、社員の幸福度や活力向上を目指す攻めのウェルビーイング経営へシフトすることが有効です。
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