「幸福学」研究の第一人者、前野隆司氏と共同研究したサーベイ『ソラミドWell-being』を通して、次世代の自由でフラットな組織を模索する


健康経営優良法人を取得するメリットは資金調達の優遇や採用力の強化などの実利にあり、デメリットは実務担当者の疲弊と現場の温度差が生じることです。
この記事では、ウェルビーイング経営支援のプロである株式会社スカイベイビーズの監修のもと、取得に向いている企業の特徴や失敗しないための具体的な対策を解説します。自社が今目指すべきかどうかの判断基準としてぜひお役立てください。
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株式会社スカイベイビーズ 代表取締役/クリエイティブディレクター
クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。スカイベイビーズでは、コーポレートサイト、採用サイト、オウンドメディアなどジャンルを問わず様々なWebサイトの制作・運用の支援まで幅広く手掛ける。
健康経営優良法人を取得するメリットは多岐にわたります。企業価値の向上だけでなく財務面の優遇や採用力の強化など具体的な恩恵を受けられます。
それぞれの利点について詳しく解説します。
健康経営優良法人の認定は、有利な条件での資金調達につながります。地方銀行や政府系金融機関において、認定企業向けの低利融資制度が用意されているためです。
具体的には、基準を満たすことで数パーセントの金利引き下げや信用保証協会の保証料減免を受けられるケースがあります。資金調達のコストを直接的に抑えられる点は大きな利点です。
公共工事などの入札において競争力を高めることができます。多くの自治体が、公共調達の技術評価基準に健康経営優良法人の認定を加点対象として組み込んでいるためです。
実際に地域の建設会社などがこの制度を活用して受注実績を伸ばしています。官公庁や自治体との取引が多い企業にとっては、直接的な利益を生み出します。
国や自治体が提供する補助金を獲得しやすくなります。IT導入補助金など一部の補助金制度において、健康経営の認定企業であることが審査時の加点要素として設定されているためです。
新しいシステムを導入して業務効率化を図る際などに、採択される確率が高まります。事業投資の資金を確保する上で強力な後押しとなります。
企業としての社会的信用が高まり、投資や取引の拡大につながります。従業員を大切にする企業は、長期的な事業リスクが低いと判断されるためです。
特に大規模法人の場合、ESG投資の観点から機関投資家の評価スコア向上に直結します。また、大手企業のサプライチェーン調達基準をクリアするための証明としても機能します。
新卒や中途を問わず、採用活動において求職者に強い安心感を提供できます。第三者機関から適切な労働環境であると客観的に認められているためです。
特に新卒採用においては、学生の家族に対して安心して入社させられる企業であるという説得材料になります。法令を遵守しているホワイト企業であるという明確な証明は採用を有利に進めます。
人材獲得競争が激しい業界において自社を選んでもらう強力な武器になります。過酷な労働環境というイメージを持たれがちな業界であるほど、認定マークの存在が際立つためです。
介護や建設や運送などの業界で認定を取得している企業はまだ限られており、求職者の目に留まりやすくなります。採用難の状況を打破する有効な手段です。
貴重な人材の流出を食い止めることができます。認定要件を満たすために、メンタルヘルス対策や過重労働対策の仕組みを社内に構築するためです。
定期的なストレスチェックや面談を通じて不調者を早期に発見し、適切なケアを提供できるようになります。突然の休職や退職による業務の停滞という経営リスクを回避できます。
出社していても業務効率が落ちている状態を改善し、生産性を高めることができます。心身の不調を抱えながら働くことによる見えない損失コストは、企業にとって甚大であるためです。
健康診断の受診率向上や適切な労働時間管理を行うことで、従業員が万全の状態で業務に取り組めるようになります。結果として、組織全体の業務処理能力が底上げされます。
社内の風通しが良くなり、組織の一体感が高まります。全社横断的な健康イベントやセミナーを実施することで、普段関わりのない従業員同士に交流が生まれるためです。
健康という共通の目標を持つ施策は、部署の垣根を越えた雑談や情報共有のきっかけを作ります。良好な人間関係は、離職防止や業務の円滑化に寄与します。
経営層から予算を引き出し、職場環境を改善しやすくなります。外部の認定を取得するためという大義名分があれば、社内を説得しやすいためです。
人事担当者が単独で提案しても通らなかった備品の導入や休憩スペースの確保などが、認定基準を満たすための投資として承認されやすくなります。古い社内制度や環境を一新する良い機会となります。
健康経営優良法人の取得には多くの利点がある一方で運用面での課題も存在します。実務担当者への過度な負担や現場の従業員との意識のずれが発生しやすくなります。
ここからは導入前に知っておくべきデメリットを解説します。
認定申請にあたって、人事や総務担当者の業務負担が急増します。調査票の設問数が非常に多く、社内の様々な部署からデータを集計する必要があるためです。
健康診断の結果や有給取得率などの数字を手作業でまとめる場合、通常業務を圧迫して残業の原因になるケースも少なくありません。兼任担当者だけで乗り切るには厳しい作業量です。
一度取得して終わりではなく、常に施策を打ち続けるプレッシャーが伴います。認定は1年更新であり、前年以上の取り組みやデータの改善が求められるためです。
毎年新しい企画を考え、実施し、効果を測定して申請するというサイクルを回し続ける必要があります。長期的な運用体制を確保できなければ途中で挫折してしまいます。
制度を利用するために直接的な金銭的負担が発生します。以前は無料で申請できましたが、制度の変更により中小規模法人部門でも手数料が必要になったためです。
毎年継続して更新するごとにこの費用を支払い続ける必要があります。外部のコンサルタントなどに申請支援を依頼する場合は、さらに多額の費用が上乗せされます。
健康投資がどれだけ会社の利益に貢献したかを経営陣に説明することが困難です。健康アプリの導入や外部セミナーの開催にかかった費用に対する直接的な売上増加は見えにくいためです。
結果として、業績が悪化した際に、真っ先にコストカットの対象として健康関連の予算が削られやすくなります。中長期的な視点での理解を得る工夫が求められます。
本来の目的である従業員の健康増進を見失い、制度が形骸化するリスクがあります。調査票の点数を上げることやバッジを手に入れることに意識が集中してしまうためです。
誰も使わない相談窓口を設置したり、申請の時期だけ急にイベントを開催したりと、実態の伴わない施策が増えてしまいます。これでは担当者の時間と会社の費用を無駄にしてしまいます。
労働環境が悪い状態で健康施策を始めると、従業員の不満が爆発する原因になります。現場が長時間労働で疲弊しているのに新しいイベントを押し付けられると、反発を招くためです。
健康を意識する前に、まずは残業を減らして人員を補充してほしいというのが現場の本音です。基本となる労働時間の是正ができていない企業には逆効果となってしまいます。
会社が個人の健康状態に介入することで、不快感を示す従業員が一定数存在します。体重や生活習慣などは個人の自由であり、会社から過度に干渉される筋合いはないと感じるためです。
また、メンタルヘルスの状態などの機微な情報を会社に知られることへの警戒感も高まります。配慮を欠いた強引な進め方は組織への不信感につながります。
本当にアプローチすべき健康無関心層に、施策が届かないというジレンマに陥ります。社内で健康セミナーなどを開催しても、自主的に参加するのはもともと健康意識が高い従業員ばかりになるためです。
生活習慣に課題がある従業員ほど忙しさを理由に参加せず、組織全体の健康水準はなかなか向上しません。全員を自然に巻き込むための仕組みづくりに頭を悩ませることになります。
健康経営優良法人の認定は企業が抱える特定の経営課題を解決する強力な手段となります。ここでは取得に投資するコスト以上のリターンを確実に得られる認定に向いている企業の特徴を解説します。
人材獲得競争が激しい業界の企業は、認定を取得することで採用活動を圧倒的に有利に進められます。介護や建設や運送などの業界は、求職者から労働環境に対して厳しい目を向けられがちだからです。
認定ロゴを取得して従業員を大切にする姿勢を客観的に証明できれば、それだけで競合他社との明確な差別化要因となります。求職者の不安を払拭できるため、採用難に悩む企業にとっては非常に有効な投資と言えます。
自治体や官公庁、あるいは大手企業を主要顧客とする企業にとっては直接的な利益を生み出します。公共事業の入札において認定企業に加点評価を与える自治体が増加しているためです。
また、大手企業はサプライチェーン全体に高いコンプライアンス水準を求める傾向が強まっています。取引条件を有利にし、事業機会を逃さないためにも、外部からの客観的な評価である認定の取得が推奨されます。
組織の規模が拡大し、従業員数が50名に近づいている企業にとって最適なタイミングです。従業員が50名を超えると、ストレスチェックの実施や産業医の選任が法律で義務付けられるためです。
この法対応を行うタイミングで健康経営の枠組みを導入すれば、業務の二度手間を防ぐことができます。労務管理の体制を整えながら認定も同時に取得できるため、最も費用対効果が高くなります。
金融機関からの大規模な借入を予定している企業は、財務面でのメリットを直接的に享受できます。多くの地方銀行や政府系金融機関が、健康経営に取り組む企業向けの低利融資制度を用意しているためです。
数千万円から数億円規模の借入を行う場合、わずかな金利の引き下げや信用保証協会の保証料減免が大きなコスト削減に直結します。資金調達の予定がある企業は、融資条件の改善を目的として取得を目指す価値が十分にあります。
すべての企業が今すぐ健康経営優良法人を目指すべきではありません。自社の現状を把握せずに見切り発車するとかえって組織の混乱を招く恐れがあります。
ここでは今はまだ取得を見送るべき企業の特徴を解説します。
基礎的な労務コンプライアンスが守られていない企業は、認定の取得を後回しにするべきです。サービス残業や長時間労働が常態化している状況で健康施策を始めても、現場の従業員から猛烈な反発を受けるためです。
まずは労働時間の適切な管理や人員配置の見直しなど、働く環境の土台を整えることが最優先です。根本的な労務問題から目を背けたまま認定を目指しても、組織の不満を増幅させるだけです。
人事や総務の担当者がすでに通常業務で手一杯の企業は、運用に失敗するリスクが極めて高いです。申請にあたっては膨大なデータの収集や書類作成が必要となり、一人に丸投げすると担当者がオーバーワークで倒れてしまうためです。
健康経営を推進するために担当者が不健康になってしまっては本末転倒です。外部の支援を活用するか、複数のメンバーでプロジェクトチームを組める余裕ができるまでは見送るのが賢明です。
バッジを手に入れること自体が目的化している企業は、長続きせず制度が形骸化します。認定は1年ごとの更新制であり、毎年継続して取り組みを改善していく姿勢が求められるためです。
経営層が何となく良さそうという理由だけで指示を出すと、申請が終わった瞬間に社内の熱が冷めてしまいます。自社の課題解決にどう結びつけるかという明確な目的がなければ、コストと時間の無駄に終わります。
創業間もないスタートアップなど、明日の売上確保が最優先の企業には時期尚早です。事業基盤が安定していない段階で、申請書類の作成やデータ管理に貴重な人員を割くことは優先順位が間違っているためです。
まずは事業を軌道に乗せ、従業員が安心して働けるだけの利益水準を確保することが先決です。組織の土台が固まり、次のステージとして労働環境の整備に着手するタイミングで検討し始めるべきです。
| 評価軸 | 取得すべき企業 | 取得すべきではない企業 |
| 主な目的 | 採用の差別化や入札加点などの明確な目的がある | 何となく良さそうという理由やバッジが欲しいだけである |
| 労務状態 | 労働基準法を遵守しておりさらなる環境改善を目指す | 長時間労働や未払い残業など基本労務に重い課題がある |
| 推進体制 | 経営陣がコミットし複数人でプロジェクト化されている | 人事や総務の兼任担当者ひとりに丸投げしている |
| 現場の反応 | 会社が環境を整えてくれることに対して前向きである | 業務過多で疲弊しており新しい施策に拒絶反応がある |
| 財務面 | 融資の金利優遇や公共調達の加点が直接効いてくる | 入札の予定もなく大型の融資を活用する予定もない |
なお、健康経営優良法人の取得を意味あるものにするための方法、自社にとって意味のあるものなのかどうか判断するための質問などは下記記事で詳しくまとめていますので合わせてお読みください。
※関連記事:健康経営優良法人は意味ない?現場の声から紐解く失敗の原因と見極め方
担当者の疲弊や現場の反発といったデメリットは事前の工夫で十分に回避できます。初年度から無理に新しいことを始めず外部の無料リソースを活用することが成功の鍵です。
ここでは実務負担と現場の温度差を最小限に抑える具体的な対策を解説します。
まずはすでに社内で実施している取り組みを、健康経営の枠組みに当てはめることから始めます。初年度から無理に新しいイベントなどを企画すると、担当者の負担が増大して失敗しやすいためです。
例えば、定期健康診断やストレスチェックの受診率を100%に近づけるだけでも立派な実績として評価されます。ノー残業デーの徹底や有給休暇の取得推奨といった既存の労務施策も、申請項目としてそのまま活用できます。
現状の業務の延長線上で申請ベースを作ることで、担当者の業務負担を増やすことなく制度を導入できます。
人事や総務の担当者が一人で業務を抱え込まない仕組みを作ることが重要です。自社だけで専門的な知識を集めたり、施策を考えたりするには限界があるためです。
加入している健康保険組合や各都道府県の産業保健総合支援センターが提供している、無料の相談窓口を積極的に利用しましょう。専門家による無料の講師派遣を活用して、社内セミナーを開催することも有効な手段です。
外部の専門機関をうまく使い倒すことで、社内のリソースを消費せずに質の高い健康経営を推進できます。
現場の従業員に健康を強制するのではなく、無意識に健康になる環境を整えることが定着の秘訣です。会社から運動や食事制限を押し付けられると、従業員はプライバシーへの干渉と感じて反発するためです。
オフィスに昇降式デスクを導入したり、無料のミネラルウォーターサーバーを設置したりするアプローチが効果的です。従業員はただ出社して普通に過ごすだけで恩恵を受けられるため、やらされ感や温度差が生まれません。
業務環境の改善に投資することで、現場から感謝されながら健康経営を実現できます。
健康経営の基盤が整った後は、さらに一歩進んだウェルビーイング経営へと発展させることが重要です。従業員の心身の健康だけでなく、総合的な幸福感を高めることが真の企業価値向上につながる理由を解説します。
健康経営がマイナスをゼロにするアプローチであるのに対し、ウェルビーイング経営はゼロをプラスに変えるアプローチです。健康経営は病気の予防や過重労働の防止など、主に身体的および精神的な健康の維持を目的とします。
一方でウェルビーイング経営は、仕事に対するやりがいやキャリアの充実感など、従業員が社会的にも満たされている状態を目指します。健康であることはあくまで土台であり、その上に従業員の幸福を築くという視点の違いがあります。
従業員が心身ともに健康であることは、企業が成長するための最低限の条件にすぎません。どれほど素晴らしい事業戦略があっても、それを実行する従業員が疲弊していては成果を出せないためです。
まずは健康経営優良法人の枠組みを活用し、長時間労働の是正やメンタルヘルス不調の予防といった労働環境の土台を固める必要があります。このベースラインがしっかりと整って初めて、従業員は仕事に対するモチベーションや創造性を発揮できるようになります。
従業員の幸福度を高めることは、最終的に自社の強力な競争優位性となります。自分の仕事に価値を感じて幸福に働いている従業員は、生産性が高く離職率も圧倒的に低いためです。
ウェルビーイングが実現された職場では、新しいアイデアが生まれやすく、顧客に対するサービスの質も自然と向上します。健康経営を通じて得た安心感を土台にして働きがいを追求することが、持続的に企業価値を高めるための最も確実な投資と言えます。
A:採用力の強化や資金調達の優遇といった対外的な実利に加え、労働環境を見直す大義名分となり、社内の風土が改善されることです。
A:申請のための業務工数が膨大になり、担当者が疲弊してしまうことです。また、現場に無理な施策を押し付けると反発や形骸化を招く恐れがあります。
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